平和に行きましょう。

山桜桃さんと蘭の話


「あ?ちょっと何チェーンロックしてるんです生意気だな」
「やり口が!!やり口が完全にヤクザの取り立て!!!」
「喚いてないで早く外して下さいよ。俺さっき職質されたばかりなんですから」
「襟首から刺青見えてる傷持ちの男とかどう考えても怪しいっすよ。明らかにヤクザですよ」
「やだなぁ俺がヤクザになるのは貴方の前だけですよ」
「びっくりする程ときめかない」



■山桜桃さん
蘭さん超怖い。目元に縦長の傷があるし、スーツの襟首からはタトゥーが覗いているし明らかに平和大好き日本人じゃない。確かに出版界隈結構戦場けどアンタがくる戦場じゃないだろ、絶対中東辺りに居てそうだよこの人。どうして出版社はこんなの雇ったんだ。……え、コネ入社?むしろこんなのとコネある社員すげぇな!!
チワワのように怯えながらも、蘭のことは受け入れている。ご機嫌伺い用だが基本的に蘭用の茶菓子は用意しているし、非常にマイペースなので執筆中顔面を凝視されても「めっちゃ監視されてるウケる」とスルーしている。
限界値に達した時に蘭が用意してくれる家庭料理は美味しいし、家のこともある程度してくれるのだが山桜桃本人はそれを蘭ではなく「執筆限界値で現れる親切な妖精さん」だと思っている。人はそれを幻覚と呼ぶ。そしてそれを事もあろうに蘭に「今回も妖精さんが居てくれたから助かりました……」とのたまわったりしている。蘭は苦手だが妖精さんのことは大好きと公言している

■あらららぎさん
山桜桃ガチ勢
熱烈なファンであり、批評家であり、面倒臭い限界オタクである。怯えられているのは知っているし、当然の反応なので特に気にしない。……えっ、職質?マジかよ今週3回目なんだけど。
死にかけていた頃に山桜桃の小説に救われ、一時偶像崇拝レベルで傾倒していた。コネ入社を果たし山桜桃の担当として実際に会った際、若い女であることは知っていたがとんでもねぇチャランポランで脱走癖がある作家であることを知り、理想と現実のギャップで1度死んだ。
短いスパンで編集が入れ替わっていたことを知り、「だったら俺が長く務めてやる」とクソデカ感情を拗らせたオタクとして以来4年半面倒を見ている。

「あははー。私が死んだらあららぎさんに、このミイラ作成キットあげますねー」
「あぁ、良いですね。俺より先に死んだら、先生を第2のロザリア・ランバルドにしてあげますよ」
「待って?」
「ははは。まぁ、俺より長生きすればそんなザマにはなりませんよ」


「あらららぎさんって刺青すげーっすね!!ヤクザみたい!」
「さては褒めてねぇな」
「そんな事ナイヨ。でもなんか模様というか、雰囲気違いますよね」
「日本のヤクザのは和彫りで、俺のはトライバルとブラックアンドグレイ……とりあえず、海外のやつです」
「ふーんふーん。何で彫ったの?」
「願掛けに彫れって言われたのが半分、趣味が半分ですよ。元々背中の……この3つあるうちの真ん中だけだったんですけど、三対にしたらカッコいいんじゃねえかと彫り師と盛り上がりましてね。腕のも、その彫り師とテンション上がって彫ったんです」
「あららぎさんも割と結構向こう見ずだよね……私のことあんまし言えないレベルで」
「若気の至りってやつですねえ。日本じゃ誤解されやすいんですが、タトゥーの一つ一つにもちゃんと意味は込められてるんですよ……先生にゃ一生ご縁のないもんですが」
「ほえー」
「今回は話聞きながら真面目にお仕事してもらえて、僕ァ嬉しいです。飯は作り置きしといたんで、後で食っといてくださいね。食ってなかったら括りつけて食わしますんで」
「はーいママー」
「こんな子育てた覚えはありません。では明後日に原稿貰いに来ますね」

「こんにちわー。原稿貰いに来ましたよっと」
「おっ、あららららぎさん。へっへっへ、今回はちゃんとご用意してますぜ」
「はいはい、受け取りました。アンタ別に遅筆でもないし真面目なんですから、毎回逃げずにちゃんとやりゃいいのに……」
「登山家が山を前にして登るように、私もまたそこに謎があれば飛び付くのです……」
「その言い回し使うなら原稿に飛びつけ馬鹿野郎。……ったく、香港に行ったかと思えばフランスにも行きやがって……」
「やー2カ国回って何かあると思ったのに何も無かった。観光だけで終わった」
「満喫してんじゃねえか。俺ァアンタ追いかけてどえらい目に遭ってるんですから、もう大人しくしといてください。この間だってコンビニ全焼に立ち会ったとか」


「あららぎさん、あららぎさん。○○しないと出られない部屋ってあるじゃないですか」
「何です、藪から棒に。知ってますけど」
「SEXしないと出られないとか、白米十合食べないと出られないとか派生あるじゃないですか」
「アンタの中でSEXと白米は同列なのか……。まぁはい、それで?」
「何しても出られない部屋ってないのかなぁって」
「ただの監禁部屋ですね」














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