平和に行きましょう。

椏人


山桜桃
梅の木のような嫋やかな雌株の椏人。480歳ほど。
王の家系の娘。今は家を離れ、小さな館(椏人比)にて穏やかに暮らしている。
夜会で蘭に会ってからめっちゃ会いに来られる。



820歳の顔に大きな傷のある椏人。行きたくもなかった夜会で萎えた気分でいたら山桜桃に一目惚れしてしまった。若い雄株に絡まれていた所を運良く助け、面識をもってから全力で口説きにいっている。




 雄株の顔など特に興味が無い、というと大抵相手からはおかしな目をされる。椏人の審美眼はいかに左右対称で整っているかの一点で、顔や目に付く場所に傷が1つでもあるとそれだけで容姿の評価は分かりやすく下がる。が、山桜桃は「それはそれでいいのに」と思う稀有な雌株だった。
 というのも、この間山桜桃を庇ってくれた雄株が“そういう男”だったからだ。気乗りしない夜会にしつこい酔っ払いなどという最悪な要素が揃った中で困り果てていたら、彼は颯爽と現れた。
 額から頬にかけ、左の顔面を縦断する程の大きな傷を持った男。椏人にしても大柄で、鋭い目付きからは鷹揚だが有無を言わさない強い威圧が込められていた。装飾の少ない簡易的な礼服だったが、見ただけで分かる仕立ての良さや様子からして高位の者であるのは間違いなかった。
 彼はその場でたじろいだ若い雄株たちをひと睨みで帰させると、山桜桃を人気の少ない場所まで連れ出し、そのまま名乗らず去っていったのだ。安心させるように、牡丹を一輪差し出して。
 山桜桃は、ああいう雄株こそが正に紳士であると思うのだ。


「…………」
「なぁおい、兄貴よ。いつまで物思いに耽ってるんだアンタは」
 ひたすら窓の外を眺めている兄の腑抜けた姿に、またかとため息がもれる。珍しく恵に代役を頼まず自分で向かった1週間前の夜会以来、夜行はたびたびあのような様子になっては気が済むまで使い物にならない。最初こそ何があったのか聞き出そうとしたが、「あぁ……」だの「いや少しな」などと延々煙に巻かれては嫌気もさす。




椏人山桜桃と人間蘭のはなし
▫山桜桃
とても小柄で弱い椏人。少ない木偶と小さな屋敷で慎ましく暮らしている王の位の娘。
どれくらい弱いかというと人間の蘭に組み敷かれるくらいには弱い。

▫蘭





















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