平和に行きましょう。
お役所仕事
「役所仕事め」
悪態を吐けど、それに応える相手はいない。政府から呼び出された客として丁重に扱われてはいるものの、どうにも役所仕事特有の手続きの長さがどうにも面倒臭い。近侍として連れてきた日本号は早々に刀帳登録の為に別室へ連れて行かれたし、私は私で例の如く健康診断を受けさせられている。この後は本丸増築の手続きもついでに済ますらしいので、多分帰るのは夕飯辺りになるのだろう。
「沙さん、結果が出ましたよ」
「はーい」
適度な距離感のある看護師がカルテ片手にやって来た。担当医、という理由でもなさそうだが、大体の診断ではこの看護師が補佐として傍にいた。
「いつも通り身体に異状はありませんが、少し血液が足りてませんね。日常生活が困難な位辛くなったりは?」
「……特にはないです」
「今度からやっぱり前田くん連れてきて下さいねー」
医者の信用がない。
「最近刀装作りや鍛刀はされてるんですか?」
「日本号捜索の為に、刀装は金を特に狙って作ってました。鍛刀はしてません」
個人的なこだわりとして、刀装は殆ど金、最低でも銀にしている。並は余程在庫がない限りは溶かしているから、多分そういった所も霊力の無駄に繋がっているのだろう。戦歴や装備状況も眺めていた看護師の顔もかなり渋い。
「……とりあえず、暫く過度の出陣は控えて遠征に切替えましょう。手入れ、鍛刀、刀装作りも最低限で、まずは霊力回復が第一です。診断書を出すので、それを上に見せて調節してもらって下さい」
「はーい」
看護師に渡された紙には、少なくとも日本語だが素人には分からない言葉で多くが綴られていた。増築手続きもあるし、ついでに持っていくのなら、さしたる手間でもない。別れ際に、診察中いい子にしていたから、という理由で飴をもらってその部屋を出た。どうにも幼児のような扱いなのが気に食わない。
待合室から出、道順を思い出しながら廊下を歩く。役所も役所仕事も嫌いだが、無機質なまでに清潔な施設自体は結構好きだ。そんなどうでもいいことを考えていたら、途中で一行と出会した。緊張した面持ちで言葉を交わす男たちと、硬い表情の女の子。重鎮揃いで何をしているのか知らないが、大方名門一族様のご案内だろう。
23世紀勢は年代を重ねているせいか、先代からの知識が相当量あると聞く。浦島太郎状態の私にはなんとも羨ましいスタート………でもなかった。心の底から全くどうでもいい。とりあえず生活と報奨金さえ確保出来ればそれでいい。
我ながら俗物らしいことを考えていると、目的地へ着いた。部屋に入れば、既に待機していた職員が手続きへ移行してくれる。
「日本号の刀帳登録が終了致しました。こちらへお連れしますか?」
「お願いします」
さて、この手続きは何時間で済むのだろうか。
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