平和に行きましょう。
猫みたい
まるで猫のようだな、と。
「なぁなぁ」
くい、と矮躯から伸びる細くて小さな手が蜻蛉切の袴を掴む。頭のてっぺんが、蜻蛉切の腹に届くか届かないか。短刀らにも紛れ込む身体が存在を主張する時は、決まって「なぁなぁ」という掛け声があった。
蜻蛉切は、それが密かに猫の鳴き声のようだな、と思っていた。
「は、蜻蛉切はここに」
だから呼び掛けられた時も、当然のように膝を付いて、出来る限り主と背丈を合わせる。それでも大きいのだが、これ以上は妥協出来まい。
首を自然な高さに戻せた主は、相も変わらず鋭い目付きをじっとこちらに合わせて、手元の紙切れを1枚寄越して見せた。現代では逆に高価になり始めた和紙ではなく、印刷紙だ。政府からの電報らしく、均一化された文字が整然と並べられている。
そこに写真付きで載せられた内容で、初めて合点がいく。
「村正が現れたらしい」
「おぉ、あやつが…。迎え入れてやるのですか?」
「そのつもりー…だけど…。確実ではない」
容易ではない。しかし、相当数の出陣をこなせば出会えるだろう。問題は、そうしなければならないか否かだ。
戦力自体は、蜻蛉切含め全員が相当な自信はある。新任のように火急という程ではない。だから、これは資材に余剰のある、あるいは心が据わった本丸が行える任務だろう。だから、強制ではない。
この主が望むのなら、1番隊を率いて必ずや村正を見つける自信はある。
主は少々悩む様子を見せてから、すぼめていた口を開いた。
「村正ってどんな性格?蜻蛉切以外ともやってける?」
「…………………悪い奴ではありませぬ」
「…うん?」
ただ、少し、ちょっと…。
蜻蛉切とて、元の主に振るわれて、ぶっ刺しまくって数ある刀剣の中でも随一の血を吸っている。故に、他の刀を変人扱い出来る程の性根だと自負出来ない…。だからこそ、言い渋る。
「その…主には少々刺激が強いかと」
「ど、どういう感じに…?」
「根は良い奴なのですが…むやみやたらに、ことある事に脱ぎたがる悪癖があるのです」
「ああー…」
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