平和に行きましょう。
外行きたい
「外に行きたい」
と沙が言えば、
「主!!長谷部がここに!!」
スパァンッ!!!と素で最高機動の長谷部が、襖から襖らしからぬ音を立てさせて現れるのが、いつもの流れになる。
沙が指す「外」は万屋のある歓楽街のことだ。手続きに手間の掛かる現代への帰還では足らない審神者の娯楽と嗜好品の為にあるが、これが中々結構な大きさである。昔の小さな店から増員に伴い、少しずつ店の改築と増築、更には土地の拡大まで重ねた末に都市と呼ばれても遜色無い規模になったのだ。
普通なら審神者一人でも十二分に出歩けるのだが、それを許さないのが他称モンペ本丸。こと主となれば、亜種の如く口煩くなるのがここの刀剣男士である。無論沙もその話は奈から言われた為、割と気にしている。
「一人で」
「いけません」
「和泉守、この間一人でエロ本買いに行ってた」
「あれはお忘れ下さい、目に毒です」
無駄に秘密を暴露された和泉守のくしゃみが遠くから聞こえた。
とはいえ沙とて一応は年頃の娘である。何度もそう長谷部とお手々繋ぎで歩くには精神的に辛いし、蜻蛉切は最終的に肩車までしてくれるから更に辛い。ちなみに以前御手杵と行けば屋台の度に鼻をひくつかせて犬の散歩のようになり、日本号と行けば「やさぐれた親子のようだ」と言外に言われた。
「ならいっそ、大勢で行きましょう」
「今いるのって長柄物組じゃん」
第一から第四まで、全ての部隊がフル稼働で出陣するのが日常なので、基本的に日中は内番と非番の者しかいないことになる。沙が記していた表を見返すと、いるのは長谷部と三名槍、それに蛍丸を除く大太刀三名に、山伏国広となっている。揃いも揃って180越えの大男ばかりで、もしそのメンバーで行くと言うのならそれはただの巨神兵の群れだ。
「そうです、本来ならこの長谷部だけで十分でしょう」
保護者面を頑なに崩さない長谷部はあくまできっぱりと同行すると聞かない。
「…先ほどから騒々しい…。一体何をしているんですか、貴方達は」
中庭からたおやかな立ち姿で現れたのは、淡い桃色と柔らかいの香り。そんじょそこらの女性よりも色気があると定評のある宗三左文字である。
「…あ、そっか宗三もいたのか。ごめん忘れてた」
「…………。貴女位ですよ、この僕のことを袖にするのなんて。それで、この堅物相手にどんな無駄な問答を?」
長谷部が口を挟む隙を与えず、するりと部屋に上がり込み沙へしなだれかかる。重いとは思わないが、いい匂いのする柔らかい人に包まれる感覚は、いつかの母親を連想させるようで落ち着かない。
「一人で万屋行きたい」
「いけません。せめて一振りはお側に置いていただかなければ」
「あぁ、大体の事情は分かりました」
「宗三も駄目?」
「えぇ、駄目です。こればかりはへし切りと同意見ですよ、僕も」
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