俺が会いに来る理由わかるでしょ

「セーンパイ。なんか甘いもんチョーダイ♡」
「ない」

えー。と不満たっぷりの声を漏らしながら高校1年男児が唇を尖らせ拗ねるなよ、と口に出さず心のうちに留める。

「ホントにねーの?なーなー。」
「うざい」

後ろから両肩に腕を乗せ背中にのしかかってくる巨体にいらっとしながらもあまり取り合わず携帯のメールをチェックしていると、視界の端に彼の持つ真っ白な雪のような白が写り混んだと思ったら頬にくすぐったさを感じ視線だけを向ける。

「俺無視してメール?何男?」
「ちがうよ。何言ってるの?」

てか近いです。いいじゃん。よくない。近づいて今にも触れそうな毛穴一つない肌をやんわりと押し返せば距離は離れたがいまだ肩に乗せられた腕も、背中にのしかかってる身体はそのままだから制服越しからでも彼のぬくもりがわかる。

「教室戻らなくていいの?夏油くんと硝子ちゃん待ってるんじゃないの?」
「あいつら二人とも用事でいねーよ」
「君、ひょっとして私を暇つぶしに使った?」
「あれ、バレた?」

にんまりとチェシャ猫のようにいたずらに歪む口元と頬が憎らしくて、頬を軽く抓ってやる。

「いって、ギブギブ!悪かったって」
「先輩を暇つぶしに使わないの」

キッと睨みつけても痛みを加えてないから口では痛いと言いながらもやっぱりその顔は笑っていて、ホントに腹立たしい後輩だ。

「次暇つぶしに使ったら先生に言って2年のクラス出禁にするからね」
「ウケる。クラス出禁とかガキかよ」
「高校生はまだガキだよ…ほら、帰った帰った」
「へいへい」

しぶしぶと言った様子で離れて扉に向かう姿を見つめる。
背中からゆっくりと消えるぬくもりが寂しくてみつめてるわけではない。決して、多分…………きっと。

「五条」
「なに?」

教室を出て扉がその姿を隠す前に名前を呼べば少し身体をのけぞらして教室内を覗き込む蒼に告げてやる。
先輩からの優しくて、ありがたい言葉を。

「ゲームとか特訓とかならいつでも付き合ってあげる」
「………」

私に会いに来るのが、教室に来る理由が“ 私 ”じゃなかったことに拗ねてるなんて彼の言うようにガキそのものだ。
だから今度はちゃんと私を理由にして。

直接に伝えてなくてもすごく緊張するし今もバクバクなっている心臓がうるさくて仕方ないし、あれから五条はこちらを見つめたまま何も発さず黙ったままだ。

「な、何か言いなさいよ」
「あーそれってさ。暇つぶしとどう違うわけ?」
「……………………………」

きょとんとした顔とまったく意味がわかりませんと言った瞳にわなわなと身体震える。

やっぱり出禁にしてやる。もう二度と来るな。

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