弓兵が負傷したから行ってきますわ、と意気揚々に向かうラーチェル様を見送った。当の俺は相変わらず宝を漁っていたのだが、このところツイていないのか、あまり良い宝に巡り会えなかった。
はあ、とため息をついて本軍と合流しようとした時だった。予想外の増援が現れ、俺はあっという間に窮地に追い込まれた。
「何をしている!早く退け!」
「お前……」
「レナック貴様…死にたいのか!?」
鋭い視線で睨まれた、と思ったら名前の腕や足にはまだ新しい包帯が巻かれていることに気付いた。
まさかと思いきや、その一部に多少血が滲んでいるところを見ると、それは負傷した痕に間違いなかった。
「お前…その足…」
「黙れ。貴様は大人しく宝を回収したら本軍と合流しろ!」
俺に戦う力がないのは自覚していた。この状況では、怪我をしている名前も長くはもたない。仕方なく俺は彼女の言う通りに急いで本軍へ戻り、名前の危険を伝えると、彼女の妹が直々に助けに行くと俺を乗せて羽ばたいていく。どうか間に合ってくれ、と祈りながら天馬は彼女の元へと走った。
「姉さん…!」
「ヴァネッサ……」
「無理はしないで下さい!ここは私が代わりますから、姉さんは早く怪我の治療を!」
急に現れた頼もしい妹に安心したのか、名前の体は機械仕掛けの様にギシギシと軋んでいるように見えた。さらに軍の後方にはラーチェル様が控えている様子が目に入り、俺は間に合ったことに安堵の吐息を吐いた。
ヴァネッサの槍捌きをぼんやりと見ながら、私は改めて自らの無力さを知った。接近戦で弓は不利極まりない。囲まれてしまうと身動きも取れず敵にされるがままになってしまうのが不甲斐ない。シレーネに槍でも習おうかと考えていると、レナックに肩を叩かれた。
「……悪かった。俺のせいだ」
「何を言っている?」
「これやるから、早く怪我…治せよ。お前がそんなんだと調子狂う」
「盗品ならいらん」
「違うって。元々俺の。だから、ほら」
レナックから特効薬を受け取り、渋々使用すると傷が癒えていった。感謝したい半面、厄介な奴に借りを作ってしまって後悔する気持ちもあった。しかしここはひとまず、死を逃れられたことに感謝しなければならない。
「…!ヴァネッサは…」
「ああ、見たところあと一人みたいだな。今行っても遅いだろ」
「貴様という奴は…なぜヴァネッサに言ったのだ!」
「は?」
自らの妹を危機に追いやるなんて、姉失格だ。私は彼女とその愛馬が怪我をしていないことを祈った。もし、彼女に何かあれば私はシレーネに合わす顔がない。
「姉が妹を危険に晒して何の意味があるというのだ!弓兵がいたとしたらヴァネッサとて命は無かったのだぞ!」
「ああ……悪かったな……でも」
「言い訳は要らぬ。ヴァネッサ!無事か!」
レナックが何か言っているのが聞こえたが、それを無視して私は妹の元へと向かった。ティターニアの様子からどうやら大きな怪我はないようだったが、安心は出来ない。
特効薬の残りを確認しながら私はヴァネッサに近づき、怪我の具合を確認した。
「姉さん…!怪我は…」
「私のことは構わん。お前は早くこれを使え。ティターニアも少し疲れているようだ」
「ちょっと、姉さん!私より重傷だったのは姉さんでしょう?早くライブの杖で治して貰った方が…」
「姉の言葉を素直に聞くのが妹というものだ。さあ、受け取れ」
私は多少強引に特効薬を渡し、安堵した。これでもう増援が来ても問題ない。ヴァネッサが無事で本当に良かった。緊張していた体がふっと解れるような気がした。
「…そういや、あいつがあんなに必死になるとこ…初めて見たな」
ティターニアを目の敵にして日頃弓で狙っている相手とは思えない。俺はその日、名前の 妹思い という新たな一面を知ることになった。
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