>
他人への関心が薄いことはある程度自覚していたが、人に指摘されると癪に障るものだとクリフは思った。グレイやロビンに言われても何も思わなかったというのに、名前がそれをさらりと言うものだから余計にその言葉が引っ掛かり、それ以来彼女への言動に気を配っている自分がいる。
その真意は彼自身にも分からず、かと言って村の友人達に相談する気もなく、クリフは今日も名前の姿を目で追っては逸らしという行動を繰り返していた。
注意力が散漫になっていたせいか敵の攻撃を受けたのだが、気にすることなく進軍しているその時だった。
「クリフ、大丈夫?」
「問題ないよ。名前、僕に何か用?」
「その傷…どうしたの?」
「何で名前がこれを知ってるの」
かすり傷だと思っていた敵の攻撃は意外と深くまで到達しており、動かす度にずきんと痛む。誰かに知れたら面倒だと回復床への出入りを繰り返していたのが仇になったか、とクリフは苦虫を噛み潰した表情を見せた。
その表情を見るまでもなく彼女は既に白魔法を唱える準備を整えており、彼が顔を上げるまでに既にその手には優しい光が灯されていた。
「知ってるも何も、クリフの行動を見てれば分かることだし」
「分かってるよ、僕は人に興味が無さすぎるって言いたいんでしょ」
「そうだけど、そうじゃないの」
「はぁ…名前って本当にお節介だよね」
クリフがため息をつくと名前は頬を膨らませてむくれながらも癒しの魔法を彼の傷へと宛てた。名前とて特別他人に興味があるわけではない。彼だからこそ気が付いたのだ。だが、おそらくクリフにはその真意は伝わっていないだろうと、嫌々ながら癒しの光を見つめる彼を見て感じる。
とはいえ、直接言う勇気もない。この時間が永遠に続けば良いのにと思いつつ名前は塞がった傷を見てクリフから離れた。
「終わったよ。気を付けてね、本当に」
「僕達は戦争してるんだよ。傷くらい出来るのは避けられない。僕以上に負傷してる人だっているし…名前、お節介のくせに周りが見えていないんじゃないの」
「お節介のくせにって、私はクリフを心配して…!」
「はいはい、それなら僕以外の皆の怪我も心配して、治してやってよね」
じゃあねと言って背を向けるクリフを見送ることなど出来ず、名前はその名を呼んでこちらへ振り向かせた。戦争をしているからこそ、この会話が最期になるかもしれないのに、彼はそれが分かっていないと名前はクリフの腕を掴んだが、いざ何かを言おうと思っても言葉は出てこなかった。
「大丈夫、僕そんなに弱くないから」
「知ってるけど、でも…!」
「名前のこと、守れるくらいにはなったんじゃない?さすがに名前とグレイとロビン、一気に守れなんて言われたら無理だけどさ」
「クリフ…」
そんな顔しないでよ、とあからさまに嫌そうな顔をするので名前は掴んでいた腕を離して俯いた。その瞬間後ろに気配を感じ何事かと振り向こうとしたが、魔法を放つクリフに肩を抱かれて身動きが取れず名前はされるがままに彼の腕の中に収まっていた。
だから言ったじゃん、という言葉で腕の中から解放されて顔をあげると、さも当たり前かのようにクリフが顎で向こう側を指し示すので後ろを振り向くと、魔法を食らって伸びている敵の姿があった。
「あ…ありがとう」
「名前は特に鈍臭いし、気をつけなよね」
「ど、鈍臭いって!酷い!」
「人の動き見る前に、自分の身の回り確認してよ。こんなことばっかりじゃ僕の命も持たないし」
誰彼構わず見ている訳では無いし、クリフを見ていたのも偶然だし今回だけだと名前が弁解すると、ふぅんと疑うような目をしてクリフは彼女の持つグリモワールに視線を合わせて、それが無駄にならないようにねと笑った。
名前は誰とでも打ち解けられるし、グレイやロビンと仲良くなるのも早かった。だからといって何か思うところがある訳では無いが、こうして心配されるのは歯痒く慣れるものでは無い、とクリフは思った。
「ほら、行くよ」
「え…行くって、どこに?」
「はぁ?皆のところに決まってるじゃん。名前、僕達が置いていかれてるの気がついてる?」
「え!あ!あれ?さっきまでルカさんが隣に…」
とっくに行っちゃったよ、とクリフはため息を吐いて辺りに敵がいないことを確認し、名前の手を引いて歩き出した。目を離すと不安だし、かと言ってずっと近くにいるのも落ち着かない。変な感覚だというのは自分でも気が付いていたがそれが何という名前の感情なのかはクリフ自身も分かっていなかった。
「ごめん、クリフ…私のせいで…」
「いいよ。どうせ後ろから襲撃されるなら一緒だし、ルカとかが食らうより僕の方が魔法には適任だし」
「回復ならするから…!」
「はいはい。無駄に回復して体力削るのだけはやめてね」
無駄って何!と噛み付く名前の手を引きながら、クリフは口角を上げた。こんな状況では気休めな言葉だとしても、絶対に死なせたりしないと彼は名前へ小さな声で言った。予想通り何?と聞き返されたが、何でもないと首を降って再び暗闇から突然現れた敵を魔法で一掃した。
すると向こうから、おーいと呼ぶ声がしてそちらへ視線を向けると、手を振るロビンの姿が見えて2人は顔を見合わせて笑った。
>
→