紫の髪の毛の魔法使いといえば、代々シャーマンだったそうだ。彼の父もまたそうだったと聞いた。そして、結婚する相手も必ずといって魔道士であることが絶対条件のようなもの。
彼に想いを寄せる立場としてはかなり気が重かった。ニイメさんが同じ軍にいては、迂闊に近付けない。それに加え、彼がよく相手にしている双子は二人そろって魔法を使える。
「どうして私は…」
初めて自分の力を呪いたくなった。剣なんて使えなくていい。戦えなくとも自分に魔法の素質があればシスターにもなれたのに、なぜ自分は剣しか使えないのだろう。
「何をまた辛気臭い顔してんだよ」
「痛っ」
「何でもいいから笑ってろ」
ゴンと魔道書で頭を小突かれて悩みの元凶でもあるヒュウは私を慰めるような言葉をかけた。ほら、こうして彼は誰にでも優しい。だから勘違いしそうになるのだ。自分が愛されているのではないかと。
しかしそれは所詮私が作りだした幻想にすぎない。早く断ち切らないと、早く現実を見ないと、勝手に期待して傷付くのは自分自身だ。
「ヒュウ、もう…いいよ…」
「は?」
「私なんて、あなたに優しくされる価値ないから…」
「何だよそれ。意味わかんねえな」
いつもの顔から、突然表情が変わった。初めて彼に睨まれたというか、真剣な顔をされた。その視線に何を返したら良いのか、どんな言葉を掛けたら良いかの判別が付かない。私はまるで蛇に睨まれた兎のように体を硬直させて視線だけを彷徨わせた。
「ふざけんなって」
「…え…?」
「俺は好きでお前の隣にいるんだよ。勝手に自分の価値決めんな」
ヒュウの言葉に顔をあげると、睨んで悪かったな。と彼はバツが悪そうに頭を掻いた。彼の言葉が信じられずいまいち理解できない私は、おそらく拍子抜けした表情をしていたのだと思う。ヒュウが私の顔を見て笑った。
「次は何て顔してんだよ…」
「…ヒュウ、私」
私の額を指で弾いたり、私の頭をこつんと叩いたり、からかっているのかと思えば先程のように真面目に意見したり。彼の様々な表情を見るたびに気持ちが増大してしまう。叶わない恋だと分かっているのに止まらない想い。
ヒュウが口を開いた瞬間に風が強くなり、私は思わず目を閉じた。
「…いいから」
「え?」
「無理すんな、ホントに。名前に倒れられたら困る」
さっき、何て言ったんだろう。風に流れてよく聞こえなかったけれど、彼のことだから私を心配してくれたのだと思う。
ちらりと横目で彼を見ると何か考えているのだろうか、どこか遠くを見ていた。そんな姿でさえ魅力的で、格好よく感じてしまって。
「いいか、名前」
「何?」
「お前が心から笑えるまで、俺は絶対お前の側を離れないからな。覚えとけよ」
そう言ってウインクを寄越して彼は去って行った。顔が熱い。今更かもしれないが、彼はもしかしたら私の気持ちにはとっくに気付いているのかもしれない。
だとしたら、今のは何?沸騰する頭で何を考えても生み出されるのは自分に都合の良い言葉ばかり。
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