敵軍を偵察に行ってきたフィオーラによると、今回は弓兵が多く、アーチも何機かあるということだった。私は飛行系部隊を出撃するか悩んだが、彼らの力無しでは勝てそうになかった。
ヒースに出撃前、ロングアーチが狙ってると厳重に忠告したのもつかの間、彼はその中に突入していった。矢は的中すらならかったので良かったものの、戻ってきたハイペリオンがかすり傷を負っていた。
ハイペリオンに労いの声をかけた後、私はヒースに詰め寄り、厳しい言葉投げつけた。
「だから言ったでしょう!」
「だが、あのままでは村が…」
「それは、そうだけれど…どうして無茶をするの!」
「すまなかった。心配をかけて……だが、誰かが行かなければならない場面だっただろう?」
だからって、どうして弓に弱いヒースが向かわなければならないの。騎馬系の人を向かわせることだって出来たのに。わざわざ危ない橋を渡って命でも落としたら、取り返しは付かないというのに。
「名前?」
「もうやめて。私はこれ以上、失いたくないの。わかっているでしょう?」
「俺は決して死なない」
「そういった類いの約束はしないって言ったはずよ」
一度失った命は戻らない。私は友人、ウハイの時のことで嫌というほど思い知った。大切な人を失うということがどれだけ辛く悲しいものかということも、これからの私の人生に影を落とし続けるということも。
「約束ではなく、俺の中の誓いだ」
「絶対とはいえない命の駆け引きはしないで」
「誰かを守るということは、多少の怪我や傷は致し方ないだろう」
彼の口調も少し鋭くなったところでハイペリオンの治療が終わった。丁度良い、もう話すことはないと私が彼に背を向けようとすると、少しため息混じりの声で引き留められた。
「待ってくれ、名前。無茶をして君に心配をかけたことは申し訳なく思っている。だが……」
「言い訳は聞かないわ。指揮官は私よ。勝手な行動は謹んで」
少し言い過ぎたかとも思ったが、相手は聞き分けのよいエリウッドやケントではなくヒースだ。私の言葉で納得したとも思えない。だが、何も言ってこない彼は珍しい。何があったのかと視線を上げると、ヒースは真っ直ぐ私を見ていた。
「…その言い方は、あまり良くないな。君らしくもない」
「私らしくない?」
「ああ。いつもの名前なら仲間をもっと思いやる言い方をするだろう?」
それは、と言いかけてやめた。
私はきっと怖かったのだ。あの時、誰より大切で、誰より私のことを理解してくれている彼を失ってしまうかもしれない、と恐怖に駆られたに違いない。だから、あそこまで彼の行動を制限するような発言をしてしまった。
そのことを本人に気付かされるなんて癪に障ったが、それよりも気付かなかった羞恥の方が勝った。
「そ、それは……」
「それは?」
「……あなたが、私にとって、とても大切な人だからに決まっているでしょう…?」
まるで告白しているような気分になった。今すぐにでもここから走り去りたい。そう思っていると、次の瞬間にはヒースの腕の中にいた。
「そう思ってくれて、嬉しい」
「……お願いだから、もう無茶しないで。私、怖くて仕方なかったのよ…」
「すまなかった。これから弓兵には気をつけるようにする」
デルフィのお守りを持ってから彼はどこにでも飛び込んでいくようになったけれど、やはり不安は付き纏うわけで。
「あれほど魔法には気をつけるように言ったでしょう!」
「すまない。周りに気を取られてパージ持ちの司祭に気がつかなかった」
私がヒースに注意しておくことは、これからも沢山ありそうだ。ため息を吐く私の手に握られたリブローの杖は手放すことを許されず、常にその輝きを放っていた。
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