※夢主死ネタ




貴方と平穏な日々を過ごしたいと、隣で笑い合いたいと願うことが、罪なのだろうか。許されないことなのだろうか。いつか貴方と再び会えたら、私は笑えるだろうか。情けない顔を晒してしまうのだろうか。どんなに季節が巡ってもこんなにも貴方のことを考えている私がおかしくて、貴方は笑うだろうか。何度日が沈めば、貴方に会えるだろうか。
会いたい、会いたいの。
貴方に会いたくて、顔を見たくて、胸が張り裂けそうなの。
私は貴方より先に逝くというのに、どうして貴方をこんなにも想ってしまうの。貴方を縛り付けたくないと思っても、貴方を追いかけてしまうのは、貴方に想いを伝えてしまうのは、何故なの。
ずるいと分かっているのに。何度も止めようと思ったのに。貴方の背中を押すべきなのに、情けない私は貴方の優しさに縋り付いて行かないで側にいてとせがんでしまう。
私の耳を擽る貴方の声が。私の髪を撫でる貴方の掌が。私を見つめる優しい瞳が。私の記憶から消えてはくれない。
いっそ何も見えなくなってしまえば。何も聞こえなくなってしまえば。貴方を求める醜い自分も見なくて済むのに。
名前、と貴方が私の名を呼ぶ声が風の音に乗って聞こえた気がして、私は自嘲気味に笑った。貴方が此処にいる訳ないもの。マルス王子と共に世界を救うために相棒のパルティアを肩に掛けて出かけていったんだもの。必ず帰ってくる、そう言って。
まさか、と私は寝台から飛び起きて悪い足を引きずって窓辺から外の様子を窺ったが、彼の姿どころか街の人の姿もまばらで、私はずるずるとその場に座り込んだ。
彼に何かあったのではないだろうか、私の勘違いであってくれ、と必死に神へ祈りを捧げた。彼を、ジョルジュを守ってくれるように。私の命に替えても、彼を守ってくれるように。

「名前様…!どうなさったのですか…!」
「何も、ありません……もう、近いのかも知れません…」

窓際で座り込んでいる私を見て慌てる従者に、私は笑顔で返事をした。ジョルジュが生きていてくれるのならば、私の命など無くてもいい。今まで貰った沢山の幸せな思い出だけで、天にも昇れる。出会ったことを後悔などしていない。貴方と出会えて良かった、ジョルジュ。どうか、どうか幸せになって。
そして私は意識を手放して眠りについた。終わってしまうのだろうか、二度と目が覚めないのか、私にも分からなかった。せめてこの温もりが、貴方だったら良かったのに。せめて、一目だけでも会えたら良かったのに。会いたかった。ジョルジュ。

「勝手に死んだら許さないって言ったはずだ」
「目を開けてくれ、名前!」
「聞こえてるんだろ…!」

真っ暗な世界で貴方の声が遠くに聴こえる。泣いているの?ねぇ、ジョルジュ。私、幸せだった。最期まで貴方のことを考えて、頭の中が貴方で溢れていたの。
私の中の貴方はいつだって格好よくて、美しい金色の髪を靡かせて、楽しげに私に色んな話をしてくれた。

「名前…っ…!」

でもね、ジョルジュ。
やっぱり私、貴方に会いたい。
愛してると伝えたい。

「………ジュ…」
「…っ!名前!名前、俺が…俺が分かるか…!?」

貴方の声を聞き間違うはずない。視界に広がる金色の髪と琥珀色の瞳。大好きなその瞳からは涙が溢れていて、私の胸を締め付けた。

「あ…」

言葉を紡ぐのって、こんなに大変だった?
貴方が目の前にいるのに、何も言えないの。

「…い…」
「俺に、何か伝えようとしてるのか?名前……」

手を伸ばそうにも、力が入らないの。貴方に握られている手を解いて貴方の涙を拭うことも出来ない。悔しい。貴方がいるのに。大好きで大好きで、ずっと会いたいと願っていた貴方が此処にいるのに、声が出ないの。愛してるなんて言葉、長くてとても言えそうにない。

「…す…………き……」
「……っ!!俺も……俺も、お前が好きだ、愛してる…!」

ああ、もう思い残すことなどない。貴方に手を握られて、愛してると言われて。
ジョルジュ、ってもっと名前を呼べばよかった。
同じ景色を見ていたかった。
貴方が取り戻した平和を共に見たかった。
でもいいの。貴方に会えただけで。
ありがとう、ジョルジュ。私の世界に色を付けてくれて。