第一印象は、優しい人。
私のことを励ましてくれるし、他人の長所を純粋に尊敬出来るようなきちんとした人だと思った。勿論それはあながち間違ってはいなかったのだが、私が思う以上に彼は不思議な人だった。

「ロベルトさん」
「ん?どうしたの?」
「また馬達を見ていたんですか?」
「よく判るね…って、これのせいか」

そう言って彼は腕や足に付いていた干し草をさっと払った。ロベルトさんは動物が好きで、そんなところが一緒にいて非常に過ごしやすかった。
私の家――と言っても叔父と叔母の家だが――にもたくさんの動物がいる。馬や犬、猫や鳥も。ロベルトさんが馬の世話をしているのを見る度に故郷に残した家族を思い出した。

「肩にも付いてますよ」
「ああ、ありがとう。ところで、名前さんも動物が好きだと言っていたよね。アカネイアで世話はしていなかったの?」
「はい。私は馬に乗りませんし…。あ、でもミディアさんの馬とは仲良しですね」
「ええと…青い髪の、」

今更気が付いたのだが、彼はアカネイア騎士団の人とあまり親しくない。グルニア黒騎士と聞けば皆近寄り難いのだろうか、彼らも積極的に交友関係を築くことはあまり見受けられない。 私が彼の言葉に頷き話を進めようとすると、予想外の続きに苦笑した。

「ペガサスナイトの人だね?」
「それは、カチュアです…」
「あれ?でも青い髪の騎士って…」
「天馬騎士ならそうだと言いますよ!アカネイア騎士団の騎馬兵の女性です」

するとようやく判ったのか、ロベルトさんは間を置いてから深く頷いた。しかしその後の反応がない。私は不審に思って話しかけてみたが、何でもないと返されてしまった。

「ミディアさんのこと…判りましたか?」
「うん。わかったよ」
「それは良かったです……ミディアさんは、私のお姉さんのような存在なんです。優しくて、時に厳しくて…。すごく、良い人なんですよ」
「名前さんは、アカネイア騎士団の人達が好きなんだね」

そう言った彼の瞳は少し寂しそうで、私は胸がざわめいた。知らず知らずのうちに、ロベルトさんを傷つけてしまったのかもしれない。
私が俯くと、ぽんと優しく頭に手が置かれた。

「どうして君がそんな顔をするの?」
「…ロベルトさんが、何だか悲しそうに見えたから…」
「そんなこと無いよ。心配してくれたんだね。ありがとう」
「いえ…私は何も…」

私の言葉に、彼は柔らかく微笑んだ。そんな動作を見る度に彼との年の差を感じてしまう。ロベルトさんは私よりもずっと大人だ。きっと、妹のような存在としか見られていないだろう。
否定的な考えは良くないとアストリアさんに言われたけれど、二つ返事で素直に性格を直すことは出来なかった。

「…名前さんは、笑顔の方がずっと素敵だよ」
「え……?」
「もちろん、泣き顔も可愛いだろうけどね。私は笑顔の方が好きだなぁ」
「ロベルトさん…?」

私の問いかけを聞いているのか故意的に無視しているのかはわからなかったが、彼は言葉を続けた。

「でも、君にとって私が涙を見せられる相手であったなら、とても嬉しいよ」

速くなる鼓動と熱くなる頬を隠すように、私は地面とにらめっこした。