どこにも見当たらないと思い探し始めて、ナターシャに聞いても知らないと言われ、ジストに聞いても同じ答えが返ってきた。どこへ行ったものかと考えていると、視界の中に揺れる無邪気な赤い髪が入ってきたので呼び止めた。
「なあ、ユアン」
「あ、ヨシュア!どうかしたの?」
「名前見てないか?」
「えーと、あっちだよ!うん、あっちにいた!」
何をしていたのかと聞いても、よくわからないと言われたので仕方なく俺はユアンが示した方向へと足を進めた。どうせ大したこともしていないだろうと思っていると、そわそわしているアスレイを見付けた。
「よう、アスレイ」
「ヨ、ヨシュアさん…」
「何かあったのか?」
「いえ…そういう訳ではなく…その…」
アスレイの視線の先にいたのは俺が捜していた彼女と、あの女魔道士だ。ここからでは何をしているのかわからず、俺は首を傾げた。アスレイは挙動不審な態度をとっているし、二人に聞くのが一番だと思って近付こうとした。
「だめです!私もこれ以上近寄るなと言われたんですから…」
「そりゃあ困ったな…じゃあお前さんもあの二人が何してるか知らないのか」
「……知っては、いますが…」
口篭ったアスレイに、こりゃ何かありそうだと追求しようと思った矢先、自称優秀なルーテと名前と声が聞こえた。耳を澄ますと、少しだが二人の会話が聞けることが判明してアスレイを余所に俺はその声に耳を傾けた。。
「――だから、なぜそうなるのですか!」
「態度で一目瞭然だ」
「大体名前は私の何をご存知なのですか?」
「言葉を返すようで悪いが、ルーテの思っていることは雰囲気で大体分かる」
珍しくルーテが名前に押されていたが、何の話をしているのかがさっぱりわからない。ここはやはりアスレイに尋ねるしかないかと割り切ろうとした時に再び声が聞こえた。
「アスレイとは…そ、そんな関係では……!」
「そうか。ならばもう話すことはない」
カタン、と物音が聞こえて身を引くと、名前が姿を現した。声をかけると一緒驚いた様子を見せたが、すぐに呆れたようなため息を吐いて俺に問い掛けた。
「いつからいた?」
「ついさっきからだ」
「…聞いたのか」
「まあ、少しな」
お前という奴は、とでも言いたげな顔をして名前は一息いれてアスレイの方をちらりと見てから、俺を引っ張った。どこに連れていくのかと思えば、少し離れた人気のない場所だった。
「ルーテが、アスレイの誕生日に何をあげたら良いか私に相談してきたんだ」
「へぇ、あの“優秀な”人にも分からないこともあるんだな」
「皮肉は結構だ。それで…まあ、その…ヨシュアに言われたことを言ったんだが…」
いつ、どんなシチュエーションで俺は名前に何を言ったのだろうか。余計なことでなければいいが、と思ってその内容を問うとすぐに答えが返ってきた。
「私のくれる物なら何でも嬉しい、と言っただろう?それをルーテに言っただけだ」
「ああ、それか……で、反応は?」
「……それでは困ります。と言われた」
ルーテらしいと言えばらしい回答なのだが先ほど聞いた会話から推測して、恐らくここから話が逸れてしまったのだろう。続きを促すと、逆に質問が返ってきた。
「ヨシュアはアスレイと仲が良いだろう。何か聞いておいてくれ」
「俺が?おかしいだろ俺が聞いたら」
「そう言われても致し方ないだろう」
むっとした声で言われたが、俺が聞いては意味がないだろう。それにアスレイの様子を見る限り、恐らく彼女達が何の話をしているかという検討くらいは付いていたはずだ。そわそわしているアスレイが、ルーテお得意のマシンガントークに押されている場面を想像して、こちらも負けてはいられないと思い彼女を抱き上げた。
「な…!ヨシュア…?降ろせ!」
「…軽いな。俺のせいか?」
「ば、馬鹿か!黙れ!この変態!」
こんな痴話喧嘩すらも、めちゃくちゃに叩いてくる彼女も、俺にとっては幸せな日常の断片。
(アスレイの誕生日には、女の口説き方でも伝授してやるか)
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