また、私の召喚した亡霊戦士が生き残った。囮として敵の中に単騎突入させているのに、倒してしまったら堪らない。
ああ、また貴重な経験値が消えた。そんな厳しい視線が私の背中に突き刺さる。
「相変わらず名前の亡霊戦士は強いな」
「…それは褒めているのか。それとも皮肉か」
「はは、そりゃあどうかね」
ヨシュアの皮肉を軽くあしらいながら視界の隅で、亡霊戦士がようやく剣士に倒される様を見届けた。安堵の息を吐いて前進しようとしたところで、誰かが私の服を引いた。
「…お前は、確か」
「うん、ユアンだよ、名前」
「ユアン、私に何か用か?」
純粋な瞳の奥に怪しい光が灯っているのを見逃すはずもなく、私は怪訝な視線を少年に返した。すると、そんな目で見ないでほしいと口を尖らせた。
「僕の亡霊戦士も強くなったから、見てもらおうと思っただけなのに」
「私に、何を見ろと?」
「うーん、そうだなあ……名前のと違うところを教えてほしいな」
あ、でも鉄の斧での必殺の出し方とかはいらないからねとユアンは笑った。そんな無邪気な皮肉に隣でヨシュアが笑い堪えていたので、私は彼を一睨みしておいた。
「亡霊戦士がああなのは私のせいではない」
「ふーん、そっか…」
ユアンの言葉を待ちながら、亡霊戦士が消えた場所を見据えた。今回の奴はトマホークを装備しており、それを見落として敵に向かわせたところ2人ほど倒しいた。しかも一人は必殺技を繰り出して。結局魔法兵に倒されてしまったが、今回も十分に仕事をしていた。
まただ、と思いながらもう一度ユアンに視線を移すと、そこに彼の姿はなかった。
「ユアン?」
「名前が考え事してる間に行っちまったよ」
「…そうか」
よく見れば部隊が進行している。だがふと気付けば、私たちの後ろ側には敵の増援部隊が迫っていた。
そこそこ守備はあるものの、サマナーになってからより一層敵に狙われやすくなった。なぜだろう。増援の敵を倒しながらそんなことを考えていると、背後からパラディンがこちらに槍を向けたことに気が付かなかった。
「名前!」
「……ヨシュア…!」
突き飛ばされてからそのことを理解して、そして彼が剣でパラディンの槍を受けていた。私は思わず再び亡霊戦士を召喚し、そちらに注意を向けると敵の騎兵はヨシュアから標的を移した。
「無茶するな!」
「…無茶してんのはあんただろ…?全く、心配かけんなよ」
ぽん、と頭に手を置かれた。
さすがの私の亡霊戦士でもパラディンの銀の槍を回避することは出来ず、呆気なく消えた。だが残りの騎兵隊は大した実力もなかったのでパラディンを倒した後は、楽勝に事を運ぶことができ無事に戦いを終えた。
「名前って、ヨシュアのことすごく信頼してるんだね!」
「どうしてそう思う?」
「だって……ヨシュアに気を許しているから油断するんでしょ?」
「……なぜそれを…」
ぼそりと呟いた言葉は彼には聞こえなかったようで、ん?と首を傾げたユアンにため息をついてから私は何でもない、と首を横に振った。
すると彼は私の背後の何かに気が付いたようで、別れの挨拶も程々に走り去って行ってしまった。
「ユアン、どうかしたのか?」
「…知らん。お前を見た瞬間に走って行った」
「ああ、そりゃあ…あいつも大人になったもんだな」
納得した瞳を見せたヨシュアの考えが全くわからず、次は私が首を傾げる番だった。
そんな私を見て、名前のそういう思考はユアン以下だなと彼は笑った。
(俺達に気を遣ったのさ)(なぜだ?)(なぜって、あんたな……)(ヨシュア?)
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