盗賊は小癪な生き物だと思っていた。というか、今でも思っている。確かにコーマという奴は話を聞く限り良い人に分類されるかもしれないが、100%そうかと言われれば答えられない。
つまり、私は盗賊という職業自体が好きではないのだ。

「貴様は誰だ」
「俺はレナック。一応…この軍のローグってとこだな」

ローグは盗賊の上級職ではあるがアサシンにならない辺り、大した力もないのだろう。この軍に参加しているからと言って私を油断させているのかもしれない。私は奴を横目で注意しながら一歩進んだ。

「俺は宝を回収すんのが仕事なわけ。そんな風に見られてたらやってらんねぇって」
「宝の回収が仕事など下らないと思わないのか。寂しい人生だな」
「俺が一生宝の回収ばっかやると思ってんのかあんたは」

特技が鍵開け?そんなものはどうでもいいのだ。それよりも、こやつが我々の軍に対し悪事を働かぬよう見張っておく必要があると私は判断した。

「護衛についてくれんのは有り難いがお前さん、あんまり頼りにならなそうだな。というか、名前……」
「誰に物を申しているのだ。撤回しろ。それと、私は貴様の護衛をしているつもりはない」
「はいはい、だからまずあんたの名前を教えろって。さっきから聞いてるでしょ」

軍に入った以上、参加している者の名前と顔を一致させることは義務だろう。愚痴を交え、半ば呆れながら名前を名乗った。その時も勿論、警戒を忘れずに。

「まさか偽名じゃないよな?」
「失敬だな、貴様」
「おっと、物騒な真似はやめてくれよ!冗談だって!」

私はもしもの時に持ち歩いている短剣をしまい、再びレナックに向き直った。見れば見るほど、何やら金の匂いがする奴だ。それをぽつりと言うと、残りの宝箱を開けてからニヤリと笑い、楽しそうに話し始めた。言わなければ良かったと今更後悔した。

「ああ、よくわかってるじゃねぇか、名前。一応、これでも俺はカルチノの豪商の息子。金で買えないものはない!だろ?」
「ふん、下らんな。金で買えないものが何かわからぬとはやはり寂しい奴だ」
「あんた、人のこと侮辱すんのが趣味なの?それともそういう性格なの?なんか、結構傷付くんだけど…」

私の趣味は天馬騎士となった妹のヴァネッサを射ることであって他人を侮辱することではない。最初から本当に失礼な奴だ。
よくよく考えて、レナックはラーチェル殿に雇われた盗賊だということを思い出した。しかし親がカルチノの豪商ということは、ロストンが擁しているというわけではなさそうなので、所詮は金で雇われただけなのであろうという結論に至った。

「宝箱を開けること以外の楽しみを知らんのか」
「そりゃ、どういう意味だ?他になんか娯楽があるとでも言いたげな」
「…あれは……!ティターニア!」

私は妹の愛馬を見つけ、弓を構えた。向こうはまだこちらには気付いていない様子だった。今日こそは必ず仕留めて、昔の鬱憤を……

「人の話聞けっての!」
「黙れ!私は今忙しいんだ」
「どこがだよ!ってか何で妹を狙」
「……ほら見ろ、外れてしまった」

残りの時間はあの口煩い妹に付き纏われて説教だろうな。お前のせいで。と漏らし、レナックを置いて私は皆の元に合流することに決めた。せっかくのチャンスを失ったのだ。これからも今日のことを根に持ってやる、そう誓って。

「おい、ちょっと待てって!…ったく、美人の割に性格がな…。ラーチェル様よりかはマシな気がするけど。いや、同じようなもんか」

そんな謎の美人弓騎士との出会いが俺の人生を変えることになろうとは、夢にも思わなかった。