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いつの間にか隣にいて、気付くと目で追っていて、あっという間に彼に惹かれていた。
口数は決して多くはないけれど、彼の優しさは一つ一つの行動や表情で十分伝わってきていたし、そのことを私も理解していた。
「ただいま」
「遅いぞ。こんな時間まで何をしていたんだ?」
「さっきね、たまたまティアモと会って…話し込んじゃったの。ごめんね」
「平和になったとはいえ、夜道は危険だ」
過保護すぎるよと口を尖らせて睨むと、そんな私を見て彼は笑った。この世界は平和になったのだ。最悪の結末を変え、新たな世界へと足を踏み出したのだ。
「そんな顔をするな。何かあっては遅いだろう」
「そうなんだけど、過保護なロンクー」
「何度も言うな…」
「あはは、自分が言ってきたくせに!」
恥ずかしそうに顔を背けるロンクーに詰め寄る私。向こうの負けは明らかで、でもそれを認めないかのように私を捕まえる。幸せな日常。
そう、平和になったのだ。武器を手に取ることもなく、戦いに身を投じることもない平凡な日々が戻ってきたのだ――――
「んー」
「もう起きろ、名前」
「あれ?ロンクー…?」
「お前…寝ぼけているのか?」
どうやらあの平和の様子は夢だったようだ。眠い目を擦って体を起こすと、今はまだ戦争中で、そこには見慣れた天幕の中であった。
やけにリアルな夢だったなと思いつつ、目の前のロンクーを見やった。
「うふふ」
「何だ、人の顔を見て突然…」
「平和な世界で生きる夢を見たの。そこには貴方もいた。私と一緒に」
「一緒に、か」
夢だったけれど、いつか現実に起きそうな近い未来のような気がしていた。でなければ、あんな幸せな幻想を見る訳が無い。もし未来がルキナ達の世界と変わらないとしたら、幸せな日常は訪れないからだ。
「うん。ロンクーは嫌?」
「そんな訳ない。分かる答えを聞くな」
「そう言ってくれると思ったけど、私の独りよがりだったら悲しいでしょ?」
「名前には敵わんな…」
やれやれという顔をするロンクーが面白くて笑っていると、なんだかこの状況まで夢のような気がしてきた。起きたらもっと不幸な現実が待っていて、彼も私の近くにはいないかもしれない。想像するだけで胸が締めつけられるようだ。
「どうした?」
「この世界も夢だったら、神様は意地悪だなぁって」
「夢は叶えるためにある。そのために俺達は戦っている。名前もそうだろう?たとえ夢だとしても悲観することはない。それに…」
「ん?それに、何?」
私が言葉の続きを催促すると、彼は何でもないと首を振ったが様子がおかしい。いつもの冷静なロンクーでなく、少し顔も赤らんでいるようだった。
こんな表情が見られるのなら夢でもいいかと納得した。夢でも、夢じゃなくても、私はロンクーの隣にいよう。
「夢の中でも、現実でも名前の隣にいられるなら俺は何処にだっていける」
「ロンクー…」
「だから悲観するな」
ありがとう。私は一言呟いて彼に体を預け、目を閉じた。優しくて温かくて安心する私だけの場所。私だけの人。
夢でもいい。どんなに夢が覚めても彼は隣にいてくれるんだから。たとえ離ればなれになっても、世界の果てまで探しに行くからね。ロンクー。
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