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《 アカネイア王に即位したハーディンの思惑はまだマルス達には明らかではなかった。以前志を共にした仲間が恐ろしい悪魔に取り憑かれていることは、勿論知る由もなく―― 》
「何を読んでいるのかと思えば、昔話じゃないか。僕も読んだことがあるよ」
「レオンさん。過去の戦争から得るものもたくさんあります。白夜にはないお話がこちらには多く…とても興味深いです」
「最近は本ばかりだな。僕にはそんなに面白いものには思えないけど」
ひょい、と本を取り上げられたかと思えば、そのページは簡単に閉じられてしまった。この本もまた、どこまで読んだか分からなくなってしまう。私はつまらないことを考えながら、レオンが魔法で先ほどの本を棚に戻す様子を見ていた。
「過去の偉人からは多くを得られます」
「そうかな?そんなに大事?昔と今では状況も大きく異なるし、同様に考えるなんて難しいね」
「まさかレオンさん、読んでいないのでは…」
私が意地悪げに彼を見遣ると、そんなことはないよ!と憤慨する彼の様子が目に映った。全部予想通り。でも、それがとても楽しい。
レオンと出会って私の世界は変わった。戦いの時に彼が私を必死に守ってくれたおかげで、私は背中ばかりを見ていた気がする。守っているつもりだったのにいつの間にか守られていて、彼が隣にいるのが当たり前となった。そして戦いが終わった今でもなお、隣にいられる。
「全く…名前は僕を何だと思っているんだ。ちょっとカミラ姉さんに似たんじゃないか?」
「うふふ。違いますよ、幸せなんです。今もこうして側にいられて…」
「次は何を言い出すのかと思えば…当たり前じゃないか。約束は忘れないよ」
「約束だなんて大げさです」
戦いの最中、レオンは私にこう告げた。死ぬまで僕は名前を離さないからね、と。その当時は戦争中、死と隣り合わせの状況下ということで勢いもあったのかもしれないとそこまで重く受け止めはしなかったが、今言われると少し変わってくる。
死ぬまで、あなたの隣に。
「もしかして、忘れたの?」
「まさか、忘れるわけないですよ」
「それならいいけどさ。僕の光になってしまった責任、取ってもらうからね」
「…理不尽です、そんな言われ方。私も…好きで貴方の隣にいるのに」
意地悪返しをされるのもいつものことだ。お兄さんにもお姉さんにもエリーゼさんにも敵わないと分かっているからこそ、私にだけは強気な彼がさらに愛しくて。
だから負けず嫌いな私もたまには仕返しをする。あなたの弱いところは私が一番知っているもの。
「大好きですよ…レオンさん」
「な…なんだよ急に…」
「死ぬまでずっと、お側に居させてくださいね」
そっと隣に寄り添うと、彼は決まって私を抱きしめてくれる。分かっているから。お互いが寂しさや苦しさを埋めているって分かっているから。今までは誰でも良かったかもしれないけれど、今はもう貴方じゃないと、足りないの。
「僕も好きだよ…。だからずっと、ここにいてもらう」
「はい…お約束します」
約束返し?と聞く彼に、私は笑って頷いた。温かい彼の体温が心地よくて、私は体重を預ける。この時が永遠に続くよう、そう偉人に祈りを捧げて。
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