そんなにおかしいことだろうか。私にとってレオンさんもゼロさんもオーディンさんも、皆が同じ存在だ。臣下に置くと言った言葉も結局本人によって撤回され、彼女自身がレオン様と呼ぶことは許されなかった。
それに、昔からマークスさんのこともそう呼んでいるので今更何を区別すればいいのだろう。
ゼロの言葉に、名前はただただ疑問符を頭に浮かべていた。

「レオン様は暗夜王国の王子だ。俺たちと同じように扱っていい人じゃない」
「はい、レオンさんは私にとって大切な人ですし、王子ですが…。それにゼロさんは友人のような存在で…」
「俺を友人って言うのはいいけどね、名前。俺とレオン様は同等の人間じゃないんだよ」
「…すみません…私にはわかりません…。レオンさんがそのことで気を揉んでいるのなら…気をつけますが…」

意外と頑固だな。さすがはレオン様を射止めただけの女だ…とゼロが呟くのも名前は聞いていたが、これといって返事はしなかった。
ゼロにとってレオンが絶対的主君であるのと同様に、名前にとってもレオンは特別な存在だったのだが、ゼロが言いたいのはそういうことではなく。

「うーん…もういいか。これ以上言っても変わらなそうだな…」
「レオン様と呼ぶのは禁止されていて…」
「僕が何か?」

急に主の声がすると二人ともその声の方向に顔を向けた。ゼロは頭を下げ、名前は彼に微笑みかけた。
二人に共通するのは、レオンと共に築いた思い出が豊かに色付いているということ。

「ゼロ、いいんだ。名前にはこのままでいてもらうつもりだよ。変える必要はない。僕もその方が気が楽だしね」
「レオン様がそう言うなら、俺は従うまでです」
「それに…名前様って呼ぶ日も近いのかもしれないよ」

その言葉に驚いたのは名前の方で、目を見開いてからレオンの顔を見て恥ずかしそうに目を伏せていた。その様子を見たゼロは状況を理解したのか、ゆっくり頷いて名前にこっそりと声をかけた。

「おっと…イイお嫁さんになってくださいね、名前様」
「ゼロさん…」
「俺は行きますね。あとはお二人で…」

レオンに一礼してその場を去るゼロの背中を二人して見ていたが、レオンが口を開くと出てきた言葉はゼロに何を言われたのか、ということだった。
名前は何でもありませんと答えるが、レオンは怪訝そうな顔をして納得した様子ではなかった。

「僕にまた隠し事?」
「隠し事というわけじゃ…。レオンさん、やきもちですか?」
「そ、そんなんじゃないよ。全く…。ほら、僕たちも行こう?」

私にはレオンさんしかいないですよ、と名前が微笑むと、彼は決まって恥ずかしそうに彼女の手を引くのだ。赤らんだ顔を見られないように。そしてそれを分かっているからこそ、彼女もその手を取る。

「名前。僕は…周りになんて言われても、君と結婚するつもりだから」
「はい…私も大好きです。レオンさん」
「ちょっと。僕が先に言おうとしたんだけど」
「先手必勝です」

ふふふ、と笑う名前にため息をついて口元を緩ませるレオン。その様子を影から見守るゼロは、幸せそうな二人の雰囲気に目を細めるのであった。