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遠い未来でも構わない。もし二つの国が手を取っていくことができたら、どんなに人々は幸せになるだろうか。
暗夜王国にいた時、私はいつもそんなことを考えていた。暗夜の人間としてあるまじきことなのかもしれない。ガロン王は白夜王国の侵略、制圧を求めていたからだ。
「変わったのは、私なのか、世界なのか…」
「何の話?深刻そうな顔をして」
「タクミ……」
彼は白夜王国の第二王子。暗夜王国の人間が嫌いで、非常に憎んでいる。無理もない。母親が目の前で敵国に殺されたのだから、憎むに決まっている。
「僕には言えない話?」
「…タクミは今でも暗夜王国の人間が嫌い?」
「なんだ、今更そんなことか。もうどうだっていいんだよ。この世界が平和ならそれで」
「平和って、なんだと思う?」
今が平和なんて私には思えなかった。たくさんの人が犠牲になり、暗夜王国は大きな損害を被っていた。新たな王はその国を統制し、今までとは違う国を作って行こうとはしているもののなかなかうまくいっていないという情報もある。
「何が言いたいんだ?名前」
「私は…暗夜の人間でも白夜でもない。どちらにも居場所はないし、どちらも守ってはくれない…悲しいことね」
「そんなこと言えるのは今だけだよ」
「えっ?」
戦いが終わってタクミは変わったらしい。ヒノカさんやサクラさんだけでなく、家臣たちもそう言うのだからきっとそうなのだろうと思う。私が彼と出会ったのは最近で昔の彼は知らない。それでもその変化を少し感じるのだから、本当に変わったのだ。
変わらないのは、私だけ?
「二度とこんな戦争起こさない。世界は変わる。僕たちが…変えるんだ」
「…やっぱり…タクミは強くなったのね」
「僕は…強くなりたかったんだ。あんな優秀な兄さんの下じゃ、何にも意味なかったけどね。でも昔の僕よりは強くなったと思うよ」
どうしてそんな顔するの?とタクミは私の顔をじっと見た。何故だろう。自分だけが変わらずに世界を恨んで嘆いていることが悔しいのだろうか。いや、違う。
私は変わろうとしなかったのだ。自分には居場所がないと嘆いて、悲劇を気取って、それで満足していたのだ。いつの間にか、そんな卑屈な人間になっていた。
「お、おい!名前?どうして泣くんだよ?」
「ごめんなさい…タクミ…私、貴方の優しさにずっと甘えてばかりだった…。ずっと気が付かなかったの…ごめんなさい…」
「僕が変わったのは名前がいたから…他の奴じゃきっと、変わらなかったよ。だから、そんな風に思わなくていい」
「タクミ…」
心配そうに私を見つめる彼は、昔の彼よりもずっと頼もしい、まさに白夜王国の王子の器だった。
そんな彼の姿が嬉しいはずなのに、私の心は青色の不安で埋め尽くされた。
「遠くへ…行ってしまいそう」
「誰のこと?名前?それとも僕?」
「王子様…だものね…」
「あのさぁ。何度も言うようだけど…僕は名前を暗夜に帰す気はないからね」
タクミが頬を赤らめながら言うので、私はその言葉の意味を理解してしまった。
ここが、私の国になるのだ。ここで生きることになる。それを押し付けられていたとしても、私には嬉しかった。彼は私の居場所を作ってくれる。
「二度は言わないから、よく聞いてよ?僕は…僕は、名前が大好きだ」
「…もう一回言って?」
「はぁ…僕の話聞いてた?」
「私も大好きよ、タクミ…」
貴方が私を愛してくれるのなら私も最大級の愛を貴方に捧げよう。
大好きを、いつまでも。
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