私も貴方もヒーロー
>※映画敵スライスの上位互換個性夢主
金色の髪を靡かせて空を飛ぶ姿が、まるで妖精のようだと伝えると、彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。貴方の些細な言葉が私を変えたのよ、そう言って彼女は再びプロヒーローへと返り咲き、自身の事務所へと身を置いてくれるようになった。初めは事務所のサイドキック達も彼女に怪訝な眼差しを向けていたが、その圧倒的な“個性”に段々と慣れていき今では当たり前のように彼女に従っている。
私はヒーローよ、だから大丈夫。そう言った彼女の強い眼差しが脳裏から離れない。
ヴィラン連合の襲撃から一夜明け、ベストジーニストは病院の寝台の上で目覚め、痛む体を起こそうとしていた。
「維さん!?」
「なまえ……」
「目が覚めたのね、良かった……!」
「オール・フォー・ワンは…」
「タルタロスにいるわ」
扉を開けると彼が動いているのを目の当たりにしてなまえは持っていた荷物を投げ捨て彼に駆け寄り、体を起こすのを手伝った。神野区での戦闘で重症を負ったベストジーニストは近くの大学病院へと搬送され、なまえはそんな彼の眠る病室へと毎日のように通っていたのだ。
彼女はオール・フォー・ワンが収監されているタルタロスに向かいたい気持ちもありながらも何よりも大切な彼を守るべく今は連合との連絡も絶ち、看病に専念していた。
「連絡は……したのか?」
「弔くんに?何度か電話は来ているけれど、私もその場には居られなかったし…かけ直すと伝えたわ」
「そう……か」
「心配しないで、維さん。大丈夫だから」
ヴィラン連合と繋がっているヒーローなど、最早ヒーローでは無いのかもしれない。否、世間からも非難されヒーロー免許を剥奪される可能性だってある。しかし、なまえは躊躇なく連合と協力体制を敷いていた。無論、彼女自身がヒーローや市民に攻撃をしたり脳無を従えたりすることはない。ただ、彼らの計画を握って時折様子を見たり、裏社会に身を置いているだけだ。
なぜそんなことになったのかと言うと、彼女自身が死柄木弔の理想の社会にも一定の理解を示しており、ヒーロー社会について疑問を感じているからだ。
「こんな時に、お前の傍にいてやれない……不甲斐ないこと、この上ないな……」
「私のことは心配しないで。貴方は傷を治すことが先決よ」
「ああ……」
「維さん、私はこれから茨の道を歩くわ。今よりもっと苦しいでしょう。でも、貴方がいるならきっと歩ける」
ベストジーニストはなまえの顔を見つめた。覚悟を決めた瞳だと素直に感じた。彼女が目指す未来は苦労に満ちているだろうが、それをやり遂げるのがなまえであると自信を持って言える。彼女に手を伸ばすと、なまえは彼の手を握った。
「私はヒーローであることに誇りを持っているから」
「分かっている」
「オール・フォー・ワンがどこまで餌を撒いてきたのかは聞かないと分からないけれど、これで恐らく連合を支配するのは弔くんよ。きっと彼を連合を導いてみせる」
「なまえ……決して、深追いするなよ……」
「ふふ、任せて。彼らとは仲が良いんだから」
笑顔と同時に彼女の携帯が鳴ると、なまえはベストジーニストへその画面を見せた。着信元は「T」と表示されている。死柄木弔のことだ、と彼は理解した。電話に出るよう促すと、彼女は頷いて通話を押した。
「後で連絡すると言ったでしょう」
『待てない』
「私も状況確認はまだなのよ。黒霧やドクターから何も聞いていないの?」
『……なまえ、俺達を裏切る気か?』
「落ち着いて。後でそっちに行ってから話しましょう
?1時間経ったら黒霧を寄越して。場所は送るわ」
『あぁ…分かった。裏切るなよ、なまえ』
電話を切ると、ベストジーニストは何事かとなまえを見つめている。首を振って、向こうもトップが居なくなって混乱しているみたいと伝えると、彼は息を吐いて目を閉じた。
死柄木弔と連絡を取っていることを知りながらなまえを事務所へ置いている以上、それが明らかになった暁には自分もヒーローを罷免される可能性が高い。それでも彼は、なまえを信じる道を選んだ。そして、今でもそれを後悔していない。
「充分に、気をつけろ」
「弔くんは私を殺さないわ。彼に会ったらその足でタルタロスへ行こうと思っているの。面会出来る状況ではないと思うけれど……。どうしても聞きたいことがあるから」
「警察にも、気を付けるんだ……。俺のことは心配ない。事務所もサイドキックに…」
「ありがとう、維さん」
恋人同士になっても2人きりでこんな会話しかしない俺たちを見たら周りは呆れ返るだろうとベストジーニストは嘲笑した。無論、甘い空気になったこともあるし、キスやそれ以上をしたこともある。しかし、2人は人間であるのと同時に、ヒーローなのだ。
ヒーローであることに誇りを持っている、というなまえの言葉を脳裏で反芻させた。
「なまえ…」
「……貴方も、ヒーローよ」
「…俺は……」
「維さんは必ずまた光の世界に戻る。私が確約するわ」
お前こそが俺のヒーローだと手を伸ばすと、なまえはその手を取って微笑んだ。その金色の美しい髪を自由自在に操る彼女の個性。時には敵を拘束し、時には大弓へと形を変え、時には翼になって空を舞う。まるで魔法、そして妖精のようだ、とその姿を思い浮かべてベストジーニストは懸命に微笑み返した。
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