スイスさんとじーちゃんと俺
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「貴様それでも軍人か!」
「ひゃーっ!!」
わかりやすく鬼軍曹と兵卒だ。
一時期、じーちゃんはスイスさんに感化されて鬼軍曹2号になっていたけど、夏のコミック祭典が来たあたりでいつものじーちゃんに戻っていた。
今回もそうなるかなー、とか思いつつ、縁側で茶菓子を貪る俺。
「名前、何をしている!貴様もくるのだ!」
「逃げてください名前!出来るだけ遠くへ!」
「貴様、我輩に逆らう気かぁあ!!」
「っきゃああぁあ!!!」
ああ……鬼軍曹が怒ってる。
スナイパーライフルを0距離でじーちゃんにぐりぐりしてる。
「スイスさん、一休みしてイチゴ大福でも食べてくださいよ」
「そんなもの「ちなみに俺の手作りです」
イチゴはじーちゃんの家庭菜園からいただきました。
スイスさんは苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、さり気無くじーちゃんにかけていた関節技を止める。
ひーひー言いながら縁側まで張ってくるじーちゃんは実に哀れだ。こう見えてもご高齢なんだから労わってやって欲しい。
……あれ、じーちゃんの友達だからスイスさんも極度の若作りか?外見年齢じゃ俺より若いのに、真実がなにひとつわからない。
「む……っ」
「食べましょうよスイスさん。せっかく名前が作ったんですよ。食べないつもりですか?じゃあ私が2個食べます。名前!お茶も入れてください!」
「誰も食べないとは言ってない!!」
……で、しかめっ面をしたスイスさんと、『やれやれ助かった』とまんま顔に書いているじーちゃんと、俺。
素敵なトリオで縁側に並んだ。
「甘すぎないですか?」
「……美味である」
なかなかの甘党さんのようだ。
スイスさんの帰り際に餅と黄粉と餡子を手渡して(保存性を重視した日本土産だ)、最後に「また来て下さいね」と言うと、初めて笑ってくれた。
俺の後ろでじーちゃんが恐ろしいものでも見たような断末魔じみた悲鳴を発していたけど意味がわからない。
確かにちょっと「普段笑わない人が頑張ったけどやっぱ無理でした」的な笑顔だったけど、大丈夫。良い笑顔!ちょっとビックリしたけど態度に出なかったからセーフだ!
じーちゃんは素直すぎたのであとで言い聞かせておく。悲鳴は失礼だ。
「ま、また来てやってもよい」
「はい、待ってますね」
バイトで培った100万ドルの笑顔で手を振ると、ちらちらと振り返りながらスイスさんは帰っていった。
鬼軍曹の時は怖いけど、それ以外のときは良い人だ。じーちゃん的に言うとギャップ萌え。
「また来ちゃったら鍛えられちゃうじゃないですかー……」
「鍛えられる隙を見せないように頑張ってもてなせば良いんじゃないか?」
「……なるほど!」
よーし、眼に物見せてやります! と、奮起するじーちゃん。
チーズフォンデュをマスターすると息巻いているけど、持っているのが土鍋な時点で負け勝負だと思う。
たぶん、次にスイスさんが来るときはチーズ鍋という斬新なものが出てくると思う。
腰痛が……とか、腕が……とか言っているじーちゃんは、ほぼ100%日々のオタクな趣味のせいで弱っているので、俺としてはスイスさんの来日が待ち遠しいくらいだ。
「俺もスイスさんみたいになろうかな」
「それだけは止めてください!」
叫ぶじーちゃん。
今日のじーちゃんは叫んでばかりなのである。……あ、移った。
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