契約更新
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まず風魔の血を引く生きのいい子供を複数名用意します
めっちゃくちゃのグッチャグチャにします(この時点で八割減ります)
生まれた事を後悔すらしなくなるまで徹底的に人格破壊を施します(たまにここで全滅します)
運良く生き残った者があれば殺しあわせます
おめでとう 最後に立っている物が風魔小太郎です。
犬神やら蠱毒と同じように作られたソレには、今更傷つくような言葉もクソも無し。契約金の重さを知れる程度に残った手前自身の思考で、「この男は本当に幸せに生きているんだろうなあ」といっそ感心すらしていた。それも全て過去の事である。
案の定である。燃え落ちるかつての栄光をぼうと眺める元雇い主の孫を抱え、風魔小太郎ならどうとでも逃げられるような場所まで運んだ。最後の忍務である。しかたなしや。
どれだけお花畑であろうとも、こうも赤々と燃える生家を見ていたらようやく現実と対面する事が出来たのだろう。「すまないね」と、小さくつぶやいた声も小太郎の優秀な耳には労せず届いた。
「戦に出ることも叶わず、北条として死ぬ事も叶わず、おめおめと死に損なってしまった。
私は頭が悪く愚かだから長くは生きれぬだろう。なあ小太郎、何故助けた。御爺様の言いつけか?ああ、責めてはないよ。お前はとても優秀で、とても良い子だ。良い子だよ。お前は、良い子だ」
以前、己の手に触れた傷のない手が今度は頬に伸ばされる。それを甘んじて受け入れた。ほとんどが仮面に隠れた顔に、血の通った熱が触れるのが新鮮だ。
「こうして撫でられた事もなかったんだろう。酷い事を、言っていたね。さあ、どこへでも行きなさい。お前はどこにだって行ける。生きていける。私はここで最後を待つよ。助けてくれたのにすまないね」
ああそうだ。ずっと思いだそうとしていたのだが、さっき不意に思いだした。この機会に言ってしまおうと久しぶりに声帯を震わせる。
「……、」
耳元で囁いた為くすぐったかったのか、クスクスと笑った。やっぱりお花畑だ。
「…ああ、それがお前の名か。とてもいい名前だ。幸福になれと祈られた子の名だよ」
なんだろうなあ、と。
よくわからない思考に風魔小太郎は立ち尽くした。
言葉にでない考えはいつも幼い。誰も教えてはくれなかったし、知る暇などなかった。膝を付く角度や効率良く人を死なせる場所、強請り方やしゃぶり方なら吐き出すものがなくなる程習ったが、それ以外はよくわからない。
真っ赤に燃えている地面のどこかで、雇い主の老人は首を切り落とされているのだろう。
ああ、庭にあった桜は俺でも美しいと思ったのに、勿体ない。
なんだろうなあ、どうしようか。
「早く行きなさい。左様なら」
この、頭の悪いくらい酷くて優しい人には、ずっと笑っていて欲しかったのになあ。
連れて行こうか。習い事の剣しか知らないこの男なら労せず連れて行けるだろう。
金の切れ目が縁の切れ目。縁ならとっくに切れている。
この人が今後俺を雇える程度の金子を払えるなんて、思っていない。全て燃えている。夏はもうすぐだった。西瓜を食べたかった。情が湧いたか。殺すか。その方がいいか。
あの老人も、俺を良い子だと撫でてくれたなあ。そうか、あれは、こうなりたかったのかもしれない。花をみて鳥をみて、空をみて地面をみて、毎日楽しく笑うだけの。あの老人にとってこの末の孫は身を削り守ってきたものの縮図だったのだろう。ああ、そういえば北条を守れと言われたなあ。期限の指定はしていなかったなあ。花だ、梅の花を貰った。受け取ったなあ。受け取ってしまったからには、働かないとなあ。
座り込む新しい雇い主の横に並んで座る。
「行かないのかい」
頷いて、焼けるすべてをみていた。
今日は月がなく、赤が美しい。
世界が終わるようだ。
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