夜
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今はそう思わない。そうなったのはナマエのせいだから、きっと死後は地獄行きだ。そうなる前にこの腹に匿って、自分のものにしてしまおう。ほら見ろまったく、悪いポケモンだ。
たまごから生まれたとき、弱くて小さいヨマワルだった時、ナマエは言った。
「お前は俺の相棒だよ。ずっとずっと一緒だよ」と。
ヨマワルの時も、サマヨールになってからも、そのたった一言を信じていた。ずっと一緒とは、永遠に一緒という事ではなかったのか。永遠をくれるのではなかったのか。俺はとっくのとうに、ナマエに魂ごと永遠をあげていたのに!
光の道を通ったことがある。
繋がりが断ち切られた感触を覚えている。
身体が造り代わり、新しいものになると同時に自分を迎えたのは最愛のにんげんではなかった。
その絶望を、このにんげんは知らないのだ。
どれだけ酷いことをしたのか、自覚なんてないのだ。
簡単に断ち切れる程度のものなのだと身体で理解させられた。
俺はどんな姿のお前でも好きなのに、お前は弱いままの俺を愛してはくれなかった。
もう一度光の道を通ってナマエの元に戻っても、うれしくなんてなかった。交換された事実は変わらない。簡単に、ボタンひとつで捨てられた痛みは俺以外にはきっとわからない。俺がどれだけ傷ついたのか、ナマエはなにひとつわかってなんてくれなかった。
裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。裏切りだ。それでもこのにんげんが好きだ。だから許した。
繋がりが欲しい。二度と離れないような、一生引き摺る傷のような縁が欲しい。だから子供が欲しい。いとしいにんげんの血と肉とを混ぜて、俺を混ぜて、そしてできる何かが欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。寄越せ。
地獄の窯が開くかのように、真っ二つに割れた腹の奥へ女が堕ちていく。悲鳴はがらんどうの体の中で反響し、どこにも零れず飲み込まれた。
しばらくして、意識のない女が裏路地に倒れていると通報されるだろう。ナマエの職場の近くだ、ある程度の地理ならわかっている。
ヨノワールは夜の闇に紛れながら、ふらふらふわふわと帰路についた。あの女は転んだ振りをしてナマエに抱き着いた、浅ましいメスだ。要らないメスでも、魂はある。
空っぽのたまごの中に魂を入れたら、それは命になる。
暴れるのを止めた魂を腹に入れたまま、寝ているナマエのベッドの上で、ヨノワールの身体は不自然に形を歪めていく。
ゴーストタイプはもともと、身体なんて言えるものは曖昧だ。短時間の死と言える睡眠に浸った人間の意識の中に入ることは難しくない。
ヨノワールの身体は大きすぎるし重すぎるから、それらしく器を作った。二息歩行の足と、腕と手。顔なんて細かいパーツは揃っていない。元からひとつきりの眼はひとつのままだ。必要なもの以外はどうでもいい。つぶさないように少しだけ浮かんで、ナマエの頬を舌で舐めた。
「おまえはおれのものだ」
今度のたまごは気に入られるといいな。
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