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あとたまに後輩の母も遊びに来るし、俺も家に呼ばれる。海が遠いので……と断ってるけど、この距離の詰め方凄いな。後輩母にマブと呼ばれてるんだけど俺の立ち位置ずっと行方不明。
3年に進学して変わったことは、将来のことを考えるようになった。当たり前のように村に戻って漁師をしようと思っていたが、それ以外にも選択肢があると気付いた。あのイルカの兄弟のように魔法士というのにも憧れがある。と言っても、ナイトレイブンカレッジには入りたいからと言って入れるものでは無いけどな。
俺がちょっと未来を見始めてる横で、後輩も少しだけ落ち着いたみたいだった。俺とつるむようになる前はあちこちで喧嘩をして殴ったり殴られたりしていたみたいだが、今では気の合う友人もできたらしく楽しそうにしている。その気の合う友達との共通の話題が『俺』なの、本当になんでなんだよという気持ちでいっぱいだ。俺の知らない俺の武勇伝を流布するの、やめて欲しい。それを伝えると「ミョウジ先輩はクールでかっけえ……!」という方向に持っていかれる。たすけて。
自分の教室で授業を受けるようになったが、休み時間の度に「ミョウジ先輩!」と会いに来る。当初教室のドアが開く度にひっくり返っていたクラスメイトも「ミョウジくん、呼んでるよ」と声をかけてくれるようになったし、後輩も「すいません、ミョウジ先輩いらっしゃいますか」と教室の前で声をかけてくれるようになった。成長をかんじる……。俺もクラスメイトもそれに慣れきっていたので、もはや違和感も何も感じていなかった。
今日は何を勉強した、あれが楽しかった、マジカルホイールの改造をした、オムレツ作るのがすっごく上手くなりました。 指折り数えて俺に伝えたいことを怒涛の勢いで語ってくるので、全部拾いながらうんうん頷く。
一ヶ月ずっとこういう話をしていたので、俺も慣れたし後輩も慣れた。が、これって客観的に見たらおかしいんだよな。俺も後輩も距離が近い。そう思ったのは、最近すこし嫌な目で見られるようになったからだ。
後輩が一生懸命喋っていると、廊下の端から違うクラスの奴がにやにや笑いながらこっちをみている。どうみても良い感情のものでは無いだろう。
最高学年になって調子に乗ってるやつが出始めた。
他称番長と言われている俺も他称なだけで何かそれっぽいことをした訳では無い。峠は攻めさせられてるが、学校では関係ないしな。後輩も荒れに荒れていたのは1年の頃だし、そもそも学校に来てなかった上に攻撃されなければ攻撃しないという判別はつけていた。
まあ舐められてるんだろうな、とは俺でもわかる。
特に問題ないが、俺が舐められることで後輩が怒るかもしれないので気付かないふりをしていた。一番厄介なのは、ああ見えて思い詰めるところがある後輩が「俺のせいで先輩が悪く言われた」と傷付く事だ。そうなると何をするか本当に検討がつかない。俺の想定を飛び越えて何かをしでかすだろう。
後輩への視線を切るように身体の位置を変えて「飲み物買いに行くぞ」と肩を押して方向転換させる。後ろから大きな笑い声が聞こえたので、もしかして下手を打ったかもしれない。
「マジでホモじゃん、キッショ! あいつだろ、不良面して女役やってる奴」
「散々悪ぶってたくせに、つええやつに腰振って媚び売ってでしか生きれねえんだな」
投げつけられた言葉が理解の外にあったので、しばらく噛み砕いてようやく何を言われているかわかった。俺じゃなくて後輩が言われている。
後輩は怒りよりも困ったような顔をしているので、もしかしたら俺の知らないところで何回も同じようなことを言われていたのかもしれない。
「…………」
「あの、ミョウジ先輩。俺は平気ですから」
「うん、よし。ちょっとこれ持っててくれ」
後輩に荷物を預けて腕まくりをする。3年になった時に入れた刺青が袖の下から見えて、俺たちを揶揄っていた同級生が逃げようとしたのか身を引きかけた。その胸ぐらを掴んで腹に拳を叩き込む。昼食で食べただろうなにかが濁った悲鳴と一緒にボタボタと口からこぼれた。それをそのまま持ち上げて、もう1人にぶつけてなぎ倒す。
「ああ、はじめて殴りたいと思って人を殴ったな」
悲鳴とか逃げる音とかが辺りに響いて、後輩が俺を止めに走ってくる。
ガタガタ震えて倒れている同級生2人の顔を上から覗き込みながら、「喧嘩しようか」と言うと断られた。なんで。意味がわからない。俺を怒らせる意図がなければ、なんで後輩を馬鹿にしたんだ? 陸のやつ訳分からんな。
停学二週間、反省文20枚の刑を受けたので進学はどうなるか分からなくなった。特に後悔はしてないので別にいい。おしまいおしまい。
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