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古着屋のアカウントで目を付けていた服を集めては更衣室にぶち込んで、着替えさせては「いいじゃん」「なんでその足の長さでロング丈着なかったの」「イカつい服はムカつくから禁止な。あとキレイ系もモテるから着んな」って指示出しして、上から下までトータルコーディネートして買った。終わった頃にはナマエがヨボヨボになってたから座らせて、さっさとオレの財布を出して会計終了。

「似合うけど女ウケ悪いB系で揃えた。オレの金だから大事に使えよ」
「へ、は? な、なんで?」
「オレが誘ってオレが選んだ服ならオレが買うのが当然じゃん。そのキメラ脱いで着替えてきて。すいませーん、ここで着替えてくんで更衣室借りまーす」

「え? え?」ってキョドり散らかしてるナマエを更衣室にぶち込んで、タグを切ってもらった服を押し付ける。最初に着せたオーバーサイズのシャツの方がオレと並んでしっくり来るから好きだったけど、普通に格好よくなっちゃったからダメ。あんなの着てたらナンパされる。
背の高さと、あと意外と筋肉もあったから同じオーバーサイズでもちょっと治安の悪いB系の方にした。こっちなら女受けは悪いし、野郎に絡まれたとしたらオレが助けりゃいいし。

困った顔をして更衣室から出てきたナマエはオレの見立て通りに垢抜けて格好よくなってた。顔色悪い癖に真っ黒な服ばかり着てたから余計に顔色地獄になってたんだな。あとイグニハイド流のメイクのせい? これ着て真面目な顔してたら、ちょうどいいじゃん。



古着屋から出て喫茶店に向かうまでの間、昼間の外でみるナマエって薄暗いとこよりこういうとこの方が似合うなって考えてた。イグニハイドの光量抑え気味の冷たくて陰気なかんじより、太陽の下の方が似合う。なんだっけ、光量抑えてるのはブルーライトカット? で、冷たいのは機械が多いから全部冷やしてるんだっけ? なにかで説明聞いたけど忘れた。

「かっこいい」
「……ええ、なんか悪い……」
「いーの。ありがとうございますエース様だけ言いな」
「ありがとうございますエース様。なんか慣れてる……?」
「オレ元カノいたもん。現実のデート経験者ですからあ」
「ひぃ、陽キャの物理攻撃。こんなん毎回してたら破産しちゃわない?」
「元カノとは全部割り勘してたから平気」
「特別扱いされてる」
「そ、ナマエのこと特別扱いしてんの」

ミドルスクールの時付き合ってた子は可愛くって好きだったけど、告られたから付き合ってみたって感じだったし。遠距離なるね、じゃあ別れよっかで終わったし。
惚れ薬の影響だろうとオレがオレの意思で好きになったらこういうことしちゃうんだな。
オレが小遣いとかバイトで貯めた金、ナマエの服で使っちゃった。未来のオレはすっげー怒り狂いそうだけど、今のオレはちょっと幸せ。その服着る度にオレのこと思い出してくれるってことじゃん。確か人に服を贈るって意味があったな、なんだっけ。

「……俺、エースに脱がされちゃう?」
「はぁ!?」
「脱がせるために服を贈るって文化、あるよね」
「それオッサンとかがやるやつだろ! そーいう意図じゃねえよ!」
「えっち」
「なんだこの恩知らず! ここで全部脱がすぞ!」
「あはは、ごめんってえ! 嬉しくて照れちゃった、意地悪言ってごめんね」

わざとナマエの服を引っ張ると「やめてやめて」って優しく撫でられる。これってマジで普通にいちゃいちゃじゃん。普通にデートじゃん。うれし。

「エース、手ぇだして」
「ん」
「プレゼント」

差し出された手のひらの中に何かが入れられた。「みて」と言われたので手を開けると、中には黒い石がついた指輪。

「全身買われたあとだとしょぼくてごめんね。全身真っ黒コーデはさすがにアレなんで、これが変わり」
「サイズ……」
「手ぇ繋いだ時になんとなくで測ったから試してみて」
「ん」
「俺が付けるの?」
「ん……」

ナマエに差し出していた右手を下ろして、ちょっと考えて左手を出す。手を触られてるだけなのにゾワゾワして、ナマエの顔が見れない。

「フリーサイズだから大丈夫だと思うけど、エース関節しっかりしてるからなあ」
「バスケするから」
「格好いいよね、見たことあるよ」
「なんで見たことあんの」
「スケッチしに行ったから」
「美術部?」
「違う、同人誌の表紙モデル」
「何いってんのかわかんない」
「ですよねえ」

親指には小さいし、人差し指中指にはちょっと緩い。ドキドキして薬指にリングが通るのを待つと、「ぴったり」ってナマエの声がした。ぴったり。オレの薬指に、ナマエが買ってくれた指輪がある。

「うれし」
「ああ〜〜エースが泣いちゃった」
「うええん」
「かあいいねえ。嬉しくて泣いてんの〜〜。涙腺ぐずぐずでかあいいかあいいだ」
「たからものにする」
「オレもこの服宝物にするからねえ」

喫茶店についたときもオレはぐずぐずに泣いてて、たぶん客も店員も「うわあ」ってなってたと思うけど関係ねえし。左手の薬指がじんわり重くて、幸せだなってまた泣いた。嘘だろ、これ全部偽モンなの? やなんだけど。

だってナマエ、オレに「好きなんだろ」ってチェリーパイ半分くれたし。オレのことかあいいねっていうし。ぜってーオレのこと好きだろ。なのにこれ嘘なの? 幸せだ〜〜って思う分、これ嘘なんですか!? ってビビる。
まじ、一週間後のオレ笑ってる? メンタル爆発してない? めっちゃ怖いのに、デート楽しかった〜〜! 幸せ〜〜! 好き〜〜! って。寮に行く鏡の前で「ハーツラビュルに転寮しろ」って駄々こねて困らせて。みんな事情知ってるから冗談だと思って爆笑してるのにキレそうになって。この惚れ薬が切れたあとの自分が本当に怖い。生きていけんの? そこにナマエはもういないんだけど。


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