一期生 卒業おめでとうございます


スラム街の名前が『ミョウジ家領地十番外地』になったとしても、そこに住む者は「スラム街」と呼ぶ。
変わったことといえば、新しい貴族が来る度に炎や糞尿で行われていた嫌がらせが無くなったことと、青空教室の復活だ。スラム街ではティガが補佐をして、二期生である子供たちに字と計算を教えているという。

無人のまま綺麗に整えられた領主館は思い思いに飾り付けられて、ダサくて最悪になっている。好き勝手に話を盛られて、第二王子様はスラム街の守護者! ナマエサマはオレ達の為に戻ってきてくださる! と大はしゃぎだ。レオナさんの心底嫌そうな舌打ちが止まらないし、ナマエサマは困った顔をして笑っていた。その頭から、豹の丸い耳が見えるのが嬉しい。長くて格好いいしなやかなしっぽが揺れるのが、嬉しい。

お互いに頻繁に会うには遠いところに住んでいるから、手紙を送り合うことになった。マジカメのアカウントも教えてもらったし、豹の獣人に戻ったナマエサマが友達に揉みくちゃにされて歓迎されている写真を見て勝手に安心する。ロイヤルソードアカデミーのいけすかないペカペカした根性、こういう時だけ役に立つ。ナイトレイブンカレッジだったらこうは行かなかった。オレの暴力で全てを解決するしか無かった。



一度折れた紙を丁寧に伸ばして、丁寧にたたみ直したものを広げる。


「なにニヤニヤしてんだ」
「へへ、見てください」


ラギーは今回の功労者であるレオナ・キングスカラーに、特別に宝物を見せてあげることにした。ガキみたいに笑いやがってと鼻を鳴らして視線が向けられる。


「オレ、100点っス!」

「おう、良かったな」


幼く大きな筆跡で書かれたラギー・ブッチの名前の横に、大きな100点と、『卒業おめでとう』の文字。



あの日、既に、スラム街の未来はひらかれていた。


←前 main|top 次→