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バシャッと音がして、目の前にいた今日の相方が顔を抑えて呻いた。
やっべー、今オレが掛けちゃった? クルーウェル先生の「Bad Boy!」の怒声にうっかり「うええ」と変な声が出る。評価さがったかな、コレ。

「サイアク、なあミョウジ。もしかして効果出ちゃってる?」
「でちゃってますねえ」
「うええ」

ミョウジは「いやだなあ」って言いながら、先生から解除薬を受け取ってその場で盛大に吐いた。やべえ! 汚ねえ! それそんなになるまで不味いの!? 「きったねえ!」って叫んでドン引きしたけど、なにその緑の液体。嘘だろ、飲んだ解除薬より質量あるけど、こいつ昼飯何食ってたんだよ。藻??

「うぼぅええええマジこれ夢?? 無理無理飲めないトラッポラちょっとしばらくお前のこと好きになるわごめん」
「お、おう……」

オレも驚いてるけどミョウジも吐きながらめちゃくちゃ驚いてる。もうちょっと根性出せよとは思うけど、まあオレって元からモテるし、今更一人くらいオレのことが好きなやつが増えたって問題ないなってかんじ。

「じゃあ、ミョウジのこと名前で呼んでやるよ。なんだっけ」
「いいんですかあそんなサービス。ナマエ・ミョウジですしばらく宜しく」
「はいよろしくー」

ミョウジ……。ナマエは髪の毛ボサボサで服も着崩してて、あまり身嗜みを気にしないタイプ。だと思ってたけど、惚れ薬を浴びてからはちゃんとした服装になってるし、メガネも丈夫さ重視のやつからちょっとオシャレなやつに変えてた。
それってオレに好かれたいからなんだよなって思うと面白いし、積極的に話しかけてきたりしないけどちょくちょく視界の端にいて「これってストーカーみたいじゃん」って笑える。害がないタイプだからいーけど。
偶然っぽく振り返って手を振ってやると、嬉しそうに笑ってて、こういうとこは犬みたいでいいじゃんって思う。てか、オレのこと好きならもっとガンガン押してきたら良くない? これじゃただの陰キャのストーカーで終わってつまんねえし、ナマエにも『思い出』ってやつあげた方がいいよな。オレってやさしーー。

「明日デート行こうぜ」
「ひょえ」
「何その声ウケる。ナマエ、オレのことめちゃくちゃ好きになってんだろ? デートさせてやるって言ってんの。嬉しい?」
「え、すごい嬉しい。エースって優しいねえ……俺以外にやったら本気で勘違いされるからやめた方がいいよお」
「なんでナマエは勘違いしねえんだよ」
「感情の原因が分かってるからかなあ」

大丈夫、俺はちゃんと理性を持っておりますからね。ナマエはそう言ってキリッとした顔を作ったあとに、ふにゃふにゃにとけた顔をして「嬉しいなあ、好きな人とデート出来るなんて、幸せだなあ」って笑った。
ナマエはデートとかした事なさそうだけど、こういうのも経験だし? 「ちゃんとエスコートしろよ」って言ったら「がんばる」って頼りにならないの丸出し。
つまんないデートで大失敗したとしても、麓の街にいくだけでそれなりに楽しめるからいいや。オレのこと大好きなやつが一生懸命オレの為に尽くしてくれるのって、けっこう特別なことだと思うし。現状を最大限楽しみてえよな。




「エース、ベッドの前に立ってくれ」
「え、こう?」
「ふん"っ」
「っぎゃーーー!!!」

え! 痛い! 喧嘩!?
思いっきりショルダータックルを食らってベッドにぶっ飛ばされたけど、灯りを背に立っているデュースはピクリともしていない。体幹やばくない? なに? こええ。え、オレなんかしたっけ? 初手暴力は新しいパターンじゃねえ?

「え、え、怒ってる? なに!?」
「あまり、ナマエを、いじめるな」
「デュースはナマエのなに!? もしかして付き合ってたりした? だったらマジごめんだけど!」
「幼なじみだ」

オレがぶっ飛ばされたまま動けなくなってるベッドにどかりと座り込んだデュースは、元ヤンの目をしてる。やっべーー。逆らいたくない目だコレ。

「あいつは良い奴とは言いきれないけど、悪いやつじゃないから……。俺の幼なじみってことを念頭に置いて、優しくしてくれ……」

一人称が『俺』になっていらっしゃる……。

「こわ……。てかオレ最大限やさしーだろ。デートさせてやるんだぞ」
「うん、だから。あまり弄ぶな」
「ちぇっ。わかったよ、大丈夫だって。エース様を信じろ。ふつーに友達になる流れじゃん。遊んでくるだけだし、心配すんなって」


帰り際にキスのひとつでもしてやろっかなって思ったけど、それやったらデュースに「弄ぶなっつっただろが殺すぞ!!!」ってぶっ飛ばされそうだからやめとく。あーあ、面白いと思ったんだけどな。


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