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(幸せなおわりを迎えたひと)
(彼の人生はハッピーエンドだったが、残された刃生はどうだろうね)
よいしょっと、いや失礼。俺みたいなのが突然来て驚いただろう?
それにしても、君も人だったんだなあ。驚いたぞ。今は人を火葬するなんて、文献では知っていたがぶっつけ本番とは酷い。
君が燃えるとき、一番暴れたのは誰だと思う?意外や意外、鶯丸だ!驚いたろう?あいつは澄まし顔が得意だが、割り切っているわけじゃない。…と、それは君が1番よく知ってるか。「主を燃やさないでくれ」と棺に抱き着いて抵抗して、しまいには真剣必殺だ。あいつのせいで葬儀が二時間も遅れた。まあ、気持ちはわかるがな。
そうそう、君が心配していた御手杵はさっさと式場から出て、煙突をずっとみていたぞ。あそこから伸びる煙が君で、まっすぐに天に行けるように見ていなきゃダメなんだと頑なに動かなかった。
あいつは『鞘を抜いたら雪が降る』という謂れがあっただろう?それをとても気にしていてな。ほら、雪が降ったら煙は登らないじゃないか。いつもは鞘なんて持ち歩いていないくせに、適当な藁を巻いた奴を鞘替わりにして誰にも抜かれないように背負い込んでいたよ。焼かれた身体は煙になって天に向かって、雨になって地上にもどって、また命になるんだそうだ。なかなか素敵な話だと思わないか?俺はあいつの自論に一票いれる。
青江は最後まで残るそうだ。
君の後始末も初期刀の仕事だと。
ずるいと思わないか?初めに来たというだけで彼は君の特別であり続けたんだぞ。俺だってもっと構ってもらいたかったし、君の世話を焼いてみたかった。青江ばかりずるいとは思うが、初期刀というものは主の死に一番影響を受けるものなのか?彼のあんな表情は初めて見た。君の通夜の日だ。壮絶な顔をして「こんな思いをするくらいなら、感情なんていらなかったよねえ」と君に恨み言を吐いていたから、覚悟しておいた方が良い。俺は君がいなくなっても、君からもらった感情は尊いと思えるから、彼の痛みには寄り添えない。そう思うと、俺は傷が浅いと言えるのか?心臓がスカスカな気分だが、どうだろう。どう思う?
宗三は…あいつはすごい。君をここにいれたあと、本体をかちわって自決した。なんだったか…そう、夏の景趣の時に君がよく買うあのアイス…チューペット?
あれみたいに「セイヤッ」とな。最後の言葉は「お先に失礼」だったか。本当に最後までやりたいようにやってる奴だな。
でも君は、あれが一番可愛かったんだろう?君が一生で一番よく呼んだ名前は、きっと宗三だったんだ。何も迷うことなくまっすぐに君だけを見て君だけを愛した刀は、宗三左文字が一番だったんだろうな。こうなるだろうと思っていたから、当たり前のことだと誰も驚かなかったよ。ただ、長谷部だけは怒っていたがな。
彼らの間でなにかしらの会話でもあったのだろうが、俺は知らん。
宗三が折れた欠片だけになった瞬間に「俺が先だと言っただろうがあ!!」と、すごい声だったぞ。もうそこらに響き渡るような声でな。壁に本体をふるすいんぐだ。長谷部も折れたよ。しかし、殉じるにしてももう少しこう…あると思わないか?粛々とやるべきことだと思うんだがどうだろう。
あの二人はもう君の魂に追いついていると思う。あの調子だと来世も離れてくれないぞ。大変そうだが、君は笑うんだろうな。
江雪は少し迷っていたが、君の弟子の元に行く事にしたようだ。彼はしっかりものだから君の弟子たちのこれからをずっと導いてくれるだろうな。小夜も一緒についていくらしい。
二振りを譲り受ける審神者は、君の弟子だからかな?少しだけ、君に似ているんだ。だからきっと、これからも幸せだよ。心配はいらない。
一期はあんまりうるさく泣くものだから、鳴狐に「話し合いが進まない」とビンタされていた。ビンタで吹っ飛ばされても子供みたいに泣きじゃくるから、弟たちも放っといてさっさと自分の行き先を決めていた。悲しい悲しい寂しい寂しいとそれだけ喚いて、寝て起きて、「では、私もそろそろ主殿の元へと向かわせていただきます」と刀解だ。あいつも結構好き勝手生きてたと思うんだ。弟たちが自立していると一期一振はこうなるのか。それとも一期一振がこうだったから弟たちが自立したのか。たまごが先かにわとりが先かだな。
他のみんなも君の遺した言葉のとおり、他所に行くも溶けるも自由に決めている。
俺もだよ。
なあ君、土の中にひとりは暇だろう。
俺くらいはついててやるさ。君からもらったはなしを、終わるまでずっと話しつづけてやろう。ぱらしゅうと花火とか、でじかめとか…いろんなものを、君がくれたから。
そういえば今日はくりすますなんだ。
惜しかったなあ、きみがくれるぷれぜんとは、毎年たのしみにしていたんだぜ。
きみの傍でならえいえんに眠れそうだ。
必要になったら、いつでも起こしてくれ。
最初にみるのは、きみの顔がいいな。
長谷部じゃないが、迎えに来てもらうってのは、なんだか特別な気持ちになるんだ。
きみのちかくがいちばんここちいい。
あんしんできる。
きみもあんしんしてくれ、骨も魂も、おれがまもってあげよう。
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「まだまだたくさん、きみにもらったのに、かえせなくてわるいな。もらっていくよ」
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土の中でまどろむように、穏やかな声が聞こえなくなる10日間。
誰かの墓の隣に掘られた大穴は、いつしか枯葉がつもり土が崩れ、そのうちすべてが消え去った。このお墓には墓守がいる。墓守の名前は、誰も知らない。
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