表
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主が現世に行って、五日目の事である。「なんてふきんしんなじょうだんを!」と今剣は憤り、岩融はそれを宥めていた。主はその日も帰らなかった。
六日目には加州清光は現世へ渡るげえとの前で主を待ち始めた。「最新の爪紅が欲しいって我儘言ったから、主、一生懸命探してくれちゃっているのかも…」と俯いている。
七日目には秋田と五虎退が自分の菓子を封も開けずに残していた。聞けば「主君と一緒に食べたいんです!」「あるじさまと食べると、幸せな気持ちになります」と笑った。
八日目に薬研と厚が「さすがに可笑しいぞ」「こんのすけはどこに行った」と神妙な顔で話し合っていた。
九日目にまた黒い服を着た男がやってきた。「本丸引継ぎの件について相談に参りました」。鯰尾が振りかぶって馬糞を投げ、その横で骨喰が「兄弟、良いふぉーむだ」と褒めて育てていた。男は帰った。
十日目に御手杵が食事を摂らなくなった。「つまんねー…」とだけ言って部屋でころがっている。
十一日目には山伏がぼんやりと主の部屋の前で庭を見ながら座り込んでいる。その横にピタリと彼の兄弟が寄り添い、小鳥の日向ぼっこのようだった。
十二日目には乱が癇癪を起こし、一期に「みんなも私も辛いんだよ」と諭されていた。俺も辛い。
十三日目に太郎太刀がげえとを壊した。壊す気はなかったようだが「迎えに、行こうかと…」と落ち込んでいた。こういう時の為に主は予備の予備の予備のげえとまで用意してくれている。誰も太郎太刀を責めなかった。
十四日目に大倶利伽羅もげえとを壊した。「打刀ならいけるかもしれないだろ」と悪びれない。その理論だと、太刀と短刀と槍と薙刀と脇差の全種が試そうとしてしまうだろうから、光忠に叱り飛ばしてもらった。案の定、「僕ならいけるかもしれない」とやる気を見せていたので釘を刺す。
十五日目に歌仙が食事を作るのを辞めた。「作ってもみんな食べないじゃないか」と言う。確かに、楽しみだった食事も、お八つ時の甘味も、味がしない。賑やかな声がどこからもしなくなった。
十六日目に青江が泣いた。「主が死んだなんて嘘に決まってるよ、僕達は騙されているんだよ」と泣いた。もちろんだ、主が死んだなんて信じられない。だって死体がないじゃないか。
十七日目に明石が言った。「これ、陰謀ちゃいます?主はん嵌められたんとちゃうんか?そもそも、なんで現世に呼ばれたんや、共もつけるなって、可笑しな話やろ」そうだ。そうだそうだ、俺達も主も騙されていたんだ。なにが定期診断だ、そんなもの向こうがこちらに来てやればいい。刀剣男士が近くにいると霊力測定に誤差が生じる?知った事じゃない、ああなんで気が付かなかったんだ。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。ころされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。だまされていた。
十八日目にいつもの男が来たので俺達は皆で刀を抜き、男を脅す事にした。男は必死に命乞いをしていたが、そんなに泣かなくていい。俺達は人間は好きだ。主が死んだと言われても、亡骸を見なければ信じない。隠すな、みせろ、さもなくば呪うぞ。祟るぞ。悪鬼に堕ちるぞ。全員で誠意を込めて説得をしたら、わかってもらえたようだ。男は転びながら走り去っていった。
十九日目、男が肉の塊を持ってきた。
「痛かろう辛かろう。なんて酷い事を、可哀想に、俺はこの目玉をやろう」ぐちゅり「俺は右足をあげるよ。大事にしてね」ぎちぎち「じゃあ僕は左足かな」ごとん
「俺は右腕」「私は左腕を」「腰から下をどうぞ」「腹をやろう」「心臓は予備も欲しいな、二つにしとこう」「皮膚は少しずつみんなから」「はらわたでええですか」「耳を」「爪も足りないか?じゃあ俺のものを」わたしのを おれのものも ぼくのからだを
ぐちゃぐちゃぐちゃ
ぐちゃぐちゃぐちゃ
ぐちゃぐちゃぐちゃ
ぐちゃぐちゃぐちゃ
ぐちゃぐちゃぐちゃ
ぐちゃぐちゃぐちゃ
めきっごりごりべちゃ
どろどろどろどろどろ
ぽたぽたぽたぽたぽた
べちゃべちゃべちゃ
四十九日目
「 」
この眼が見えないことが口惜しい。きっと今、この部屋で、彼の目に三日月が瞬いているのだろう。俺の捧げた、両の目玉が。
「主、」
お還りなさい。
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