鶴丸の落とし穴
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先日、鶴丸をはじめて演練に連れて行ってからだ。いわゆるレア刀難民な当本丸では、鶴丸が最もあとに来た刀で練度も低い。ようやく特がついたので、どういうものかと視察目的で第一部隊にくっつけていってからこうなった。どうやらよその本丸の鶴丸に唆されたらしい。と言っても、根が善良な鶴丸なのでそこまで悪質ではない。
周囲に『この先足元注意!』『危険!!』と立て札でがっつりかためた中心にわかりやすい落とし穴を掘ってわくわくした目で見つめてきたりする。なんだこれは、お約束なのか。とりあえずわざと踏み抜いて(10センチもない凹みだ)「かかったー!」と言えば大喜びで飛び出してきて「俺がやったぜ!どうだ!驚いたか!」とまとわりつく。
とりあえず悪意はないようなので放ってはいるが、どうやらこれを俺に構われるための流れだと思い込んでいるらしい。回りくどい構ってアピールである。
そんな猫の子でさえ本気で引っかかるわけがない鶴丸印の落とし穴に普通にはまったのは、俺のコンタクトの予備がなくなったことと、庭の中だからと油断してメガネをかけずに歩いていたからだとしか言い訳がつかない。鶴丸もまさか俺が本当に直進してそのまま本気でハマるとは思わなかったのだろう。「主!!」という悲鳴が聞こえたと思ったら、思いっきり足を取られて転倒した。腹の下から「うぐっ」と声がする。この時点で俺は、鶴丸を潰していることを悟った。
「わるい!!」
「い、いや。俺が悪かった。すまない、君を傷付ける意図はなかったんだが…」
「俺もまさかハマるとはおもわなかった…ちょっと待てよ、どくから…」
ビリッ
「…………えっ」
「…………すまない……見えなかったんだ、めっちゃ引きちぎった気がする……」
「いや、だ、大丈夫だ!内番着だからな!破けても汚れても仕方ない!ほら、立ってくれ」
「お、おう」
ビリッ
「……えぇ…」
「こ、こんどは何を引っ掛けた!?」
「…俺の袴の帯、だな。いやあ、驚いた」
「悪気はない!悪気はないんだ!」
「んん……どうせなら悪気があった方が嬉しかったな」
「はあ?!」
「いや、なんでも。なあ君、このままの格好だと流石に寒いから、君の部屋にいれておくれ」
「おお、いいぞ。悪いことしたなあ」
「なぁに、そもそも俺のせいだろう。気にするな」
ずるずるの袴を引きずってたちあがった鶴丸に先導されて視力0.03の世界を歩き出した。途中で何振りかの刀剣に声をかけられたきがするが、俺が答える前に鶴丸が相手をして返してしまったらしい。なんだかめんどうなことになる。なんとなく、そんな気がした。
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