清光の主はいつ見ても何か可笑しい
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「ちょっと前に流行った本丸乗っ取り?っていうの?また流行ってるって言うじゃないですか。だから僕頑張ったんですけど」
信愛するスカポンタンがまた何か言っている。清光はとりあえず思考を止めて己の本体に手をかけながら詰め寄った。
「また何か造ったの!?」
「わはは」
「わははじゃないでしょう主のバカッ!もう本丸には余計な玉鋼も木材もないよ!乗っ取りの前にブラック認定喰らっちゃうよこんなんじゃ!この前、主のせいで手入れの資材足りなくなったんだからね!!」
「その件は本当に申し訳ないと思っている。もう二度とやりません、ごめんなさい」
「あ、別にそこまで怒ってないから大丈夫。俺も言い過ぎてごめんね?」
ここでお互いに深々と頭を下げて和解し、「じゃあ僕また作業に戻りますね」「俺も内番にもどるよ」と別れかけ、ふと我に返った清光は審神者を引き留めた。力がこめられたせいで反動をかけられた審神者が軽く飛んだが、それもすかさずキャッチ。
此方をジッと見つめてくるのに何故か全く視線が合わないが、これはいつものこと。己の主は悪い人間ではないが、発明者気質と言うのだろうか。だいぶどこか可笑しい。
「な・に・を!頑張ったのかなあ〜〜?」
「これ、呪具を感知したらその呪具にくらいつく日本人形型ロボ」
案の定だった。
引き留めて良かった。
満面の笑みの主が持つのは、小夜左文字より少し小さい位の巨大日本人形。この際どこから出したなどという野暮の質問はやめておく。どうせまともな答えなどでない。主の初期刀として五年、日常の一幕とまでなってしまった『発明発表』。だいたいが、やりすぎでお蔵入りになる素敵な発明ばかりだ。
「やめて主それすごく怖い」
「自動追尾と警戒モードで自ら動く」
ギギ…ギッ…ギ…
「やだほんとに怖い!歩いてる!」
「邪魔にならないように夜だけ動くんだ」
「やめてよ!」
『マッマーーー!!!!!ママーーーー!!!!』
「呪具を見つけるとこうやって違和感のない鳴き声で教えてくれる!」
「声が怖い!」
『マッマーーー!!!!マッ…マ”ァァァァアアアマアアァァア”!!!!!!!!!!』
「そして僕が呪具を確認したら、素早く獣のように呪具に喰らいついて噛み砕いて破壊!これでいつ乗っ取り目的の見習いとやらが来ても安心だとおもわない!?」
「ねえこれ夜歩くって言ったよね!?俺ヤなんだけどこいつと同居すんの!!」
「ええ…そんな事いわないでくださいよ。せっかく作ったのに」
「俺が我儘いってるふうに言うのやめて!これは総意です。当本丸の!刀剣男士全体の総意です!でも機能面として獲物に喰らいつくガッツは認めるから次回に期待してる!もっとビジュアル可愛くして!猫とかウサギにして!」
「意見有難う。参考にするね」
「どーいたしまして!」
起動確認用の呪具に歯茎を剥き出しにして齧り付く日本人形を、直接視界に入れないように眼を逸らす。審神者の背後、少しだけ開いた障子の隙間にぎっしりと日本人形が整列していたような気がするが、清光は気付かないかったという設定で行こうと即座に決めた。あれは突っ込んではいけないやつだ。
そうだね、本丸は広いから警備するのに何体も必要だもんね…。わかってる。俺はわかってるよ、主は俺たちの為に頑張ってくれているって事。
今度こそ別れを告げてお互いの仕事に戻る。「改良したらまた清光に見てもらいますね」と不吉な予告をして立ち去った審神者の背は、薄くて頼りない。この頼りない背中で、彼は清光たち刀剣男士を必死に守ろうとしてくれているのだ。
審神者になって一年目の冬――――。
「審神者を脅して刀剣男士をあんなことそんなことする役人の噂を聞きました。怖いので、鶴丸の悪戯からインスピレーションを受けてこれを開発しました。『悪い役人さんさよならばいばい』です。ゲートを通ってきた瞬間登録されていない役人だけを選別し、まず簡易ゲートが足元に展開。その後僕と面接のち疑わしかったらこの巨大落とし穴の底に再転送します。底には3メートルほど水を張っておきました」
「殺意が一ミリも隠れてない!!鶴丸さんだって『俺そこまで酷いことしてない』って眼で震えてるじゃん!?」
二年目の秋――――。
「僕、歴史は遡れないんですよ。人間なので。でもこの時代ではけっこうフリーじゃないですか」
「危ない事はやめてよ?」
「あ、大丈夫です。見ての通り武力もないんで。でもこの前審神者だけの飲み会に出たじゃないですか」
「俺達に内緒でね!もう、本当にやめてよ!」
「ああごめんなさい。で、行った飲み会なんですけど歴史修正主義者タコ殴り会でした」
「……?ちょっと待って理解が追い付けない」
「僕が歴史修正主義者に『アホな審神者共が護衛もつけずに飲んだくれてるぞ』とリーク。のこのこやってきた奴らをゴリッゴリの戦闘審神者御一行でタコ殴り。会場もその日の為に造った即席の戦場」
「ま、待って…?」
「練度九十九の『露の元女スパイ』『アフリカで育った生まれながらの戦士』『凄腕傭兵』『現代に生きる忍者の末裔』のパーティでさたでーないとふぃーばーしました。みなさん「もういい俺に殺らせろ!」状態だったとか」
「お願いだから交友関係ぐらいまともでいてよ」
三年目の春――――――。
「ねえ主、どうして俺達の本丸って天井に手の痕とか茶色いしみとかついてるの」
「ああ、ブラック本丸を解体した時に血天井にしようってもらったんです」
「待って三年目にして衝撃の事実だった。え…なんで…?」
「なんか拍が付いて格好いいかなあって」
「うちに小狐丸はいないのによく似たような影を幻視する理由がわかった」
「ブラック本丸に小狐丸はいなかったそうですよ?」
「なにそれただの幻覚?!手入れして手入れ!俺のきれいなおめめが大変!」
四年目の夏――――。
「みんな暑いって言っていたから」
「お願い主、もう少し全体をみて考えよう?俺達は歴史修正主義者と戦っているんだよ?決して主の召喚した異国の化け物を相手取っているわけじゃない。出来ちゃうから。主、霊力あるからやろうと思えばできちゃうの。ねっ?なにあの白い巨大いもむしいいぃぃぃ」
「いやあ、ルリム・シャイコースってホントにいたんですねえ」
「早く元の世界に還してええええええ!!!」
あ、泣きたくなってきた。
悪気…だけは、ない。うん。そこが俺の主の良いところだ。
この良いところを活かしていきたい。うん。うん…がんばろう。泣いてない。大丈夫、俺は主の事が好き。主も俺が好き。よし、問題ない。がんばれる。
「清光、言い忘れてました。明日外出するので護衛お願いします。…あれ、泣いてます?」
「泣いてない、これは心の汗。明日ね、りょーかいっ。あ、そうだ主。あれも止めてよ、夜中に廊下這いずり回る赤ん坊人形。蹴っちゃいそうで怖いからさ」
「歌いながら目玉を光らせる二足歩行の犬人形ではなく?」
「あれも怖いからやめて。それじゃなくって、二週間くらい前から起動させてるあれ!」
「笑いながら天井を走る西洋人形でもない?」
「だーかーら、赤ん坊!人形!」
「それ、人形ではないよ」
「えっ」
「血天井にしたのがまずかったかなあ。たまに出るんだよね、気にしないで」
なにこれこわい。
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