bgm, Bruno Mars /Old & Crazy

8 pause 思考一時停止




気だるさはあっても泣き明かしたような憔悴ではなく、暖かな綿雲の上で瞼を開けたような心地良さがあった。多分、勝手に動いている洗濯機の音がなくても、もう寂しくなることは無いだろうなと思えるくらいに満たされていた。

自分の着替えを洗っているんだろうな。
もう少ししたら戻ってくるだろうか、それまで寝ていようか。お留守になったひざしのまくらを抱き込み、寝心地の良さを求めて寝返りを打つ。すると逆に目が覚めてしまって、身体に当たるシーツの感触が気になって仕方がなくなってしまった。


服を着なきゃと薄目を開けて、心当たりのある箇所を眺める。しかしどこにも赤いのが見当たらない。身体を起こしてベッドの下を見てみれば、赤いのどころか服もなくなっている。嫌な予感は脱衣所から流れてくる洗濯洗剤の匂いと、洗濯機の音、ひざしの口笛からだった。


よろける体で何とか立ち、シーツを巻きつけてドタドタと走る。 脱衣所で曲がれば、私のレースを摘んで小首を傾げるひざしと目が合った。




「ハヨ。先に回しとこうと思ったんだけどコレ一緒に洗っちまう? 可愛いよなぁ。まさかユメがこーんなエッチで堪んねぇの履いてるとは思わねぇよなぁ」



おはようと言ったんじゃなくて、
叫ぼうとして出なかった声がワナワナと震えただけだ。
拳に寝起きの微々たる力をこめて、
次こそ私は力いっぱいに叫んだ。



「パンツ! 返して!」

「あ、ゴメンな? やっぱ手洗い?」

「なんでひざしにパンツ手洗いされなきゃなんないのよ! ばか! 返してったら! 本当に怒るよ! それだけは! 本当に嫌! 絶対に! 駄目っ!」

「待っ、ごめ! もう怒っ」

「かーえーしーて」

「ヨケイナコトシテ……スイマセンデシタ」

「最っ低」



パンツを取り返し、ブラも拾い上げてバスルームに投げ込む。どうして素敵な朝の開口一番にパンツを返せと叫ばなければいけないのか。ムードもへったくれも無い。
その上こっちはまだ怒ってるっていうのに、一度はしょんぼりとして見せたひざしがニタニタと口を緩ませるものだから、あからさまに引いた顔で睨みつけてしまった。



「……何よ気持ち悪い」

「いやァ、ほらァ? 怒ってんの最っ高に可愛いなァっつーか? 寝ぼけたまま素っ裸で走ってきたんだろ? 迫力がねぇっつーか最高にカワイ」

「あっのね! 怒ってるってば!」

「ウン。ごめんな。もうしねぇよ? それでェ? そんなに怒ってんのにお洗濯を始めた俺のためにシーツ持ってきてくれたんだよなぁ」

「はーあ?」

「いいぜいいぜその冷たい目クセんなっちまうな」

「この変態!」

「シーツびしょびしょにしちまったもんな。綺麗に洗おうな」

「ちょっと……! や、やめてったら! 引っ張るな!」



巻き付けていたシーツをくるりと取られて、ひざしの腕の上に座ってしまう形であっという間に抱き上げられる。無防備な胸元に顔をスリスリとされて妙な声を上げた私は、また寝室に運ばれてしまった。


「もっかいオフトン被ろうなァ」

「うわぁぁあ」








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