ひな様リクエスト*撫子の本編五条side
「名前、俺のことまだ好きか?」
あの日の夢を見た。
初めて自分の気持ちに答えが見つかった時、馬鹿なお前が俺より先に答えを導き出していたのが少し悔しかった。
あの時から気持ちが変わっていないのであれば、俺達は同じ気持ちのはず。あれから色々あった、お前が俺のことを諦めたんじゃないかと少し思ったけど、その不安はもう無い。一回しか恋した事が無いんだって、鈍感だと文句言いたげな顔をして言うから。
でも意地っ張りな性格を考えると素直になる確証はない。お前が欲しかったもの、俺なら持ってるでしょ?
助けてって言えよ。その苦しいの全部受け入れるから、大丈夫だよ。
「きらい、五条のことなんか…きらい」
出会った頃によく言い合ってた言葉が今では懐かしい。俺からすれば、弱っちいヤツが俺に嫌いなんて、どうせ努力もしない口ばかりのクソ生意気でムカつくと思っていたけど、アイツは違ってた。
「いや絶対好きでしょ、俺のこと」
出会った頃に比べて少しずつ俺にも笑った顔だったり、柔らかい顔を見せてきたが、今の彼女は昔に戻ったように表情は固く、生意気な顔をして目線を逸らす。
ずっと家の問題で悩んでたのは知っていた。別にそんなの俺にとってはどうでも良かったし、それよりも名前の成長を見るのが楽しかった。どんなに喧嘩しても、どんなにボコボコにされても、生意気な面して立ち上がる、その姿が。
立てんだろ、まだ。
「この望みはシェンロンじゃ叶えられねーから名前に言ってんだよ」
「…叶えやすいやつにしてよ」
「……名前、こっちみて」
何かを怖がるような、そしてどこか悲しそうな顔をしながら下を向く彼女の右手を取る。強く握れば壊れそうで、優しく取って、軽く指に口づけた。
「名前、好きだよ」
「へ……」
「名前のこと、俺に頂戴。絶対守るから」
「……うそ、」
「ウソじゃねーよ。ついでに先に言っとくけど、術式にもかかってないからね。で、名前。俺のこと好きなの嫌いなの?」
正直に答えて。それが俺の叶えたい望み。
真っ直ぐ見つめてそう伝えると大粒の涙を浮かべて、閉じていた口が小さく開き、心の底にしまっていたであろう言葉を呟いた。
「……すき、」
「ははっ、やっと両思いじゃん。俺も好きだよ」
お前が俺の瞳が大好きなくらい、俺もお前の瞳は好きだ。誘惑の術なんて無くったって、好きだ。
遅くなって、ごめん。と、言ったが、ぶっきらぼうな態度になってしまったかもと見つめると、いっそうに泣き出した。うわああ、と泣き声を聞いたのは、あの縁を切るなんて出鱈目な噂が流れたあの呪霊を祓った時以来か。あん時も、お前は俺の事思って言ってたんだな。
気づくの遅くなって、悪い。
それでもゴチャゴチャと不安を吐き出すから、この気持ちがどんだけのモノかをはっきりと答えれば、ふふっと小さく笑って、本心を言葉にしてくれた。
「…私は、五条の、そばにいたい、」
「離れたくても離してやんねーから」
名前の肩をゆっくりと抱き寄せる。正月ん時に一緒に寝た時にも思ったけど、抱き枕の素質がある位マシュマロみてーな身体してる。
全部吐き出せ、今まで我慢してきた分。全部受け止めてやるから。だからもう会わないとか、俺に関わらず生きていくなんて言うな、一人でいいなんて、俺には名前が必要なんだ。
「さん――五条さん、」
「……あ?おー七海、灰原」
「寝るんであれば自室に戻られたらどうですか」
「五条さんが居眠りなんて珍しい!」
談話室でウトウトしていた最中、後輩達の声で意識を戻した。春が近いと冬の寒さを昼間は感じなく、寧ろぽかぽか陽気に身体が睡魔を求めてくる。
ここんとこ特級術師になってから任務の入り方がエグい程立て込んでいた。まるで今まで誰も対処出来なかったからと後回しにしていたツケが回ってきたかのように。
そして後輩達も任務に追われているようで、会う回数も徐々に減っていた。
「いーだろ別に。つーか任務帰り?土産は?」
「はい!新幹線のホームで買ったお饅頭です!最近人気のお店みたいで美味しいらしいですよ!」
待ってましたと言わんばかりに灰原は紙袋からお饅頭の入った箱を出し、開けて一つ手に取る。
「お、サンキュー」
「名字さん待ちですか?」
「別にー、久々に暇だっただけ。アイツもまだ帰ってこねーだろ」
……一応、今日は久しぶりに一日休みだったから楽しみにしてたのに、彼女は朝から任務だと聞いた時は大きな溜息が出た。休んでもストレスが溜まりまくる一方。
饅頭の包み紙を開いて、一口で頬張ると程よい甘さが口の中に広がり、ストレスな脳が緩和していく。
「名字さんと、定期的に連絡をとってるんですね」
「……何でそんな事聞くワケ」
「別に、名字さんがまた悲しまないのであればいいんです」
「お前さぁ…やっぱり名前の事気になってんだろ?」
「気になってないです、面倒事はやめて頂きたいだけなので」
「七海は名前ちゃん先輩が悲しそうな顔するのが嫌なんだよね!シュンてしてる所見てると抱きしめたくなっちゃうよね!」
「灰原、余計な事は謹んで」
あの告白の時もそうだ。名前の事を奪ってもいいかなんて、普段冗談も言わない七海が言ってきたことに違和感があった。傑が知らない内に告白したり、頭でいっぱいだったけれど―……その可能性を忘れていた。七海も灰原も名前には懐いてるっぽいし、油断は禁物だ。
「そういえば五条さんって!いつから名前ちゃん先輩の事好きなんですか?!」
向かい側のソファに座った灰原がずい、っと顔を前に出して興味津々に聞いてくる。灰原の隣に座った七海は興味がないフリをして本を開く。……もし名前に好意があるとすればコイツにこれ以上の情報は教えたく無い。
「お〜い、本を読むならお前こそ部屋にかーえーれっつうの」
「一応、今後お二人が喧嘩する事もあるでしょうし、参考程度に聞いておこうかと」
「参考ってなんだよ!!」
「僕達が入学した時にはもうイチャイチャしてたもんね〜。名前ちゃん先輩は頑なに違う!って言ってたけど、あれは間違いなく恋してる顔してましたよ!」
俺と七海の会話をピュアな心でスルーする灰原の言葉に、記憶を遡る。
……確かに。俺が気づかなかっただけで、硝子も傑も知ってたし、まさか出会った瞬間から好きだったなんて言われて、表に出さないにも程があんだろと思った。でも、それよりも問題なのは俺の方か。
「つーか正直、いつからか分かんねー…」
「でもでも、急に可愛いく見えてくる時って無いです?」
「あー……確かに。そういえば丁度一年前くらいに借りたアダルトビデオの女が、ちょっと名前に似ててさ。それでなーんか可愛いなって思った事あったな」
「え、どの女優です?」
「何を聞いてるんですか」
「教えねーっつうの。つーか覚えてねーよ、それに後でよくよく見たら全然似てなかったし」
そう、あれは丁度今の時期くらいか。
今の一年生が入学してきて、いつもみたいに任務の帰り道にレンタルビデオ屋で何本か借りて。その中に興味本位で同級生モノのアダルトビデオをテキトーに借りてみたんだ。内容はそれこそ自分に歯向かってくる女が主人公の事が実は好きで――……みたいな、学園恋愛のアダルトビデオ。
その歯向かってくる女が名前の態度と似ていて、何か可愛いなと、主人公の下で喘ぐ女に対して思った事はあった。まあ歯向かってくる女優は別に名前の顔に似てたわけでもなく、名前の方が可愛い。
簡潔に言えば名前でヌいた。
ついでにゴムをつけての自慰が難しいと噂に聞いたことがあって、試しにとゴムを使ってみたら素直に出るし、そのままゴムの箱をベッドの上に放置してたら名前に見つかるし。
…そういえばあの時のゴム、誰かと使ったの?って不安なのか聞かれた事あったな。お前でヌいた、なんて恥ずかしくて言えずにはぐらかしたけど。
しかしそれより前から縁切りの呪いの時も、バレンタインの時も、アイツに夢中になっていた。元々成長する名前をみて面白いと思っていたし、いつからかなんて詳しく覚えていない。つーか今まで好きな人に関して問い詰めた時、アイツ俺に向かって俺の事言ってたのか。コッチは知らない間に知らない男を好きになってんのかよと、苛立っていたのに。
結局それも俺で、とどつまり全部………いや、そういえば一人いたな。
硝子と行った合コンで出会った、七海に似たヤツ。話していて楽しかったと会おうとしていた事に腹が立って無理矢理キスしたけど、結局その似非七海野郎とどうなったのか知らない。
………………気になる。
「おっつかれ〜!!」
噂をすればなんとやら。背後からソファに座った七海と灰原の肩に手を回し、肩を組む名前と目が合う。
……おっまえ、俺に触れるのに精一杯だったくせに、後輩には簡単に触れるのかよ。
「あれ、五条もいたんだ。ごめんね、任務入っちゃって」
「……別にいーって」
「そ?ね、三人で何話してたの?七海も参加してるって珍しいね!」
「言いません」
「え?!何で、ケチ!」
……こーみると七海との距離、近ぇーんだよな。七海も無駄な事は言わないタイプなのに、名前の事になると突っかかってくる。それに名前はイケメンに弱い。何たって俺の好きになったのも顔で一目惚れしたと言うくらいだ。もしかしたら日本人離れした七海の顔もきっと――…。
「おーい五条?大丈夫?」
「……あ?何が、」
「もしかして体調悪い?五条が良かったらケーキ買ってきたから部屋で食べようと思ってたけど……あ、七海と灰原の分もあるよ!」
「わーい!ありがとう名前ちゃん先輩!」
「二人とも任務頑張ってるし、助かってるからね。いつもありがと!」
喜ぶ灰原の頭を撫でる名前に、またモヤモヤする。なんだよなんだよ、もしかしてコイツ女誑しならぬ男誑しか……?流石誘惑術師と言いたいが、苛立ちが治らない。ソファから立ち上がって、灰原の頭を撫でる名前の手を掴んだ。
「食べる、二人で」
「はいはい。二人とも、冷蔵庫に入ってるから勝手に食べていいからね」
「はーい!」「ありがとうございます」
「五条さん、名前ちゃん先輩の事になるとお母さん取られた子供みたいだね」
「触らぬ神に祟りなしですよ」
なんて言われてるとも知らず。
アイツが俺を拒んだ時、傑には抱きしめ合うのを拒まなかったのに、俺が触れるのはダメだと受け入れられなくて腹が立ち、謝るまで無視しておくことにした。
傑の事が好きならそう言えばいいのに、頑なに首を縦に振らないし、もし傑が好きだとしてもモヤモヤが止まらなかった。
丁度乙山家の事もあったし、俺に触れられないのがいかに重大な事か身を持ってしれと、アイツに見せびらかし、謝るように作戦を立てたのに――名前の行動は、俺の考えの範疇外を進む。
名前が合コンに行ったと傑から聞いた時、理解が出来なかった。傑が好きなのに何で合コンに行ってるのかも分かんねーし、傑は名前の好きな人を知ってるって言うし。何で硝子と傑は良くて俺だけ教えられていないのかもムカつく、そして何より俺の心の中を掻き乱してきて腹が立った。
あんなちんちくりんの事なんて興味ねーし、合コンで惨敗してこい。
と思った次の日、久しぶりに見た彼女の顔はげっそりしていて、失敗に終わったんだろーなと思った。ザマーミロ。
「顔死んでんぞ」と悪態をつけば「…うるさい」と弱々しくながらも否定する声が聞こえ、携帯のバイブ音が鳴る。音の発信源を辿ると、名前の机に置いてあった携帯がブルブルと震えては、またブルブルと震える。
「お前、テスト近ぇのに誰とメールしてんの。そんなんだから赤点とんだよ」
「別に……返信してないよ」
興味ねーとはいえ、鳴り止まない携帯のバイブ音に苛立って声をかけると、名前は普段と変わらない態度で接してくる。それが嬉しかった。
「昨日硝子がゴウコンっていう会合に連れてってくれたんだけど、非術師の人達からメールが沢山着てさ……非術師ってこんな頻繁にメール送るくらい暇なのかな」
「お前……合コン知らねーで行ったの?」
「え、会合でしょ?非術師の気持ちを理解する交流会だと思ってたんだけど……」
…は?会合?何言ってんだコイツ。男漁りに行ったんじゃねーのかよ。
名前が失恋したのも知っていたし、傑の事も違うってなれば、昨日の話からして出会いを求めに行ったと解釈していたのに。
「……んで、パンピーと連絡先交換したのかよ」
「非術師に喧嘩売っちゃうから、克服しようと思って……」
何人と交換したんだよ、と聞くと10人くらい?女の子も同じくらい居て、女の子と連絡先交換したかったのに出来なかったと凹んでいた。
失敗どころか成功してんじゃねーか。しかもその成功を疲れたってコメントするか?どうやら名前自身は合コンに行ったと思ってないらしい。つーか男女半々の所で気づけよバーカ。
まあ今まで友達も居なかったヤツだし、恋愛話にめっぽう弱い、世間的な話題も知識的にも。そりゃあ気づかねーわけだ。
「…メールの内容見せて」
「?いいよ」
名前は何の抵抗も無くメールを開いて受信メールを見せてくる。携帯を渡してプリントにまた視線を戻すし、やましい事は何も無いと言うことだろう。
昨日の時点では[昨日はありがとうございました]と丁寧なメールを送ってるようだが、そのメールに対して十通程、五人程の相手から追加で連絡が着ていたが、返信することなく未開封のままだったメールを開けていく。
[昨日は楽しかったね!][何が好きなの?][今何してる?][デートしようよ!]等、名前に対して好意を持った内容が送られてきたメールだった。
「昨日会ったばかりだし、まだ開封してない返信のメールにメールが来るってどういう事なんだろうね」と何も意識していない名前を見てホッとするが、その未開封の下に一通だけ返信してあるメールがあった。
「コレ、返信してんじゃん」
気になってメールを開いてみれば[返信ありがとう。笑って聞いてくれて嬉しかったよ。また今度お茶でもしながら話聞いてほしいな]という優しそうなメールだった。それに対して名前も[こちらこそありがとう。笑いすぎてお腹千切れそうになったよ、また面白い話聞かせてね]と好印象のメールを送っていた。
何でこれだけ、しかも次会う約束しようとしてんじゃん。と口に出そうか思っていると、あぁ。と名前は笑った。
「その人だけは話してると、面白くてね。顔が七海に似てて。でも全然性格真逆でさー。話が面白くて、楽しかったからありがとうって返信したの」
七海自身も面白い所あるけど、顔が似ててあのギャップは笑っちゃった。とあまり見せた事のない嬉しそうに笑った顔をする名前に、胸の中がモヤモヤする。
んな顔、今までオレに見せた事だって少ないのに、それを初対面の男に見せんなよ。話が面白かったって、何の話をしたんだ、そんな楽しそうな内容だったのか?あー……うざい。
「また会うの、コイツと」
「え?……まあ」
お前がここに来るまで色んな壁を登って来たのは分かる。何度もぶつかって、足掻いて、時には泣いたりして。そんな名前を近くで見てきたのに、今の名前は少し遠くに感じる。
硝子の意図を理解していないんだろうが、場が彼女を変えていく。きっと、このままだと七海に似た知らねー男が名前の側に居るんだろう。
「――恋愛に対して臆病な名前に、悲しまない運命を、アンタが手を取って進ませてあげるんなら良いんじゃない?」
…そんなの嫌に決まってんだろ。俺のそばから離れるなんて。
「お前って七海が好きなわけ?」
「は?!ち…違うけど」
「じゃあ誰だよ」
誰って…と名前は少し困った顔を見せる。逃がさないように腕を掴んで、逆の手でサングラスを取り一瞬、視線が混じり合う。
それはっ…!と少し顔を赤くして目を背けた。その顔を赤くしてる思い浮かべてるは誰なんだよ。つーか七海に似た話の面白いヤツってなんだよクソ。それだけでも面白いのは分かる。分かるけど、なんで俺じゃねーんだよ。ああ、腹立つ。
「ご……五条には関係ないじゃん!それに諦めるって言ったでしょ」
「関係無くねーわ。お前の一番は誰だ、七海か?傑か?何で俺には、なんで」
ギリギリ保っていた線が弾け飛んで、思わず一向に答えを出さない名前の手を掴んで引き寄せ、そのうるさい唇を思わず唇で塞いだ。
うるさい、俺に関係ないって?関係アリアリだわ馬鹿。
「お前は俺だけ見てりゃあいーんだよ」
「んぅっ、んん、」
数センチしか離れていない名前の淡い撫子色の瞳を見つめて、顎を掴み唇を塞いでやった。柔らかい唇の感触が伝わり、唇の間から舌を通せば名前の唇の間から中に入って舌を絡める。息が出来なくて苦しそうな症状にゾクゾクし、胸板を押す手はいつの間にか俺の制服をぎゅっと掴んでいて、愛おしく感じた。
「もー、何そんな怒ってんの?」
ケーキをもって名前の部屋へ向かい、ベッドの淵に背中をもたれて座る。ケーキを頬張って甘ったるいカフェオレで喉を潤すと、苺をフォークで口に運ぶ名前は問いかけた。
「任務だったのは申し訳ないと思ってるけど……その分時間作るから」
「違う、そーいうんじゃなくて」
「?……じゃあ何?」
ちっぽけも頭にない悩みに困ってる彼女に対して、どう聞けばいいのか考えていなかった。
「……ケータイ、見してくんない?」
「ケータイ?いいよ?」
一言返事で携帯を渡してくる名前にホッとしつつも前回の記憶が蘇る。そうだ、あの時も何も無いと安堵してたら七海の似非野郎との連絡を見つけて――安心はまだ早い。
メールボックスを開くと、補助監督との事務的な連絡ばかりでたまに俺や硝子とのやり取り。電話の発着信欄もほぼ俺と補助監督の名前で知らない人との連絡は見当たらない。もう連絡は取ってないのか……?
チラッとケータイの中身を覗く名前は「え、メール?」とメールボックスを漁っているのを若干不審に思ったようだ。
「何か重要なメール消しちゃった?どれ?送ろっか?」
何も疑問に思わない灰原以上のピュアさに罪悪感しかなく、携帯を返して背後から抱きしめて肩に顔を埋める。
「えっ、何何どうしたの?さっきから変だよ?」
「……お前、似非七海とどーなったんだよ」
「似非七海?」
「ほら、合コンで連絡先交換して会おうとしてただろ」
「??……ああ!七海に似た性格真反対の人ね!」
七海に似てて性格真反対って未だに謎なんだけど。
「で、どうなったって……会ったのかって事?」
「……そー」
素直に聞きづらく不貞腐れたように言い返すと、名前は抱きしめた手を上から優しく撫でる。
「会ってないよ。あの頃から忙しくなって京都行ったりで会う所か連絡出来なかったし。それに好意があります的なメールが後から着てたから、丁重にお断りしたよ」
「……それいつの話だよ」
「姉妹校交流会終わって帰ってきた時だっかなあ……?携帯久々に電源入れた時に送ったの」
京都に左遷され、名前の携帯は東京の自室の寮に置きっぱなしになっていた。なんせ東京校の人間と連絡は取ってはいけないなんて理不尽な条件を上の連中が提示したからだ。
なんとか東京に連れ戻して気持ちに気付かされ、告白したけど……。
「何で断ったワケ?会おうとしてたのに」
「好意があるって言われちゃったら、断るしかないじゃん。答えれる気持ちは無かったし」
「もし俺がお前に告白しなかったらどうしてたんだよ」
「どうも何も、片想い続ける気だったよ。この好きな気持ちが終わるまで」
なんだ、それ。
そんな宝物みたいな想いを、言わないつもりだったのかよ。
「それで〜?悟くんは不安で聞いちゃったんだ?」
「……んだよ」
「別に?いっつもやられてるから仕返し」
……いつも俺が名前を茶化すような調子で、中々呼ばない名前、そして敬称までつけて呼ぶ。
その証拠に抱き締める手を緩めると、こっちを向いて頬を少し赤らめて笑った。
「ふふ、もう連絡消しちゃって残ってないから安心してよ。気になるなら全然見てもらっていいよ」
「あ〜!!……くそ、むかつくわ」
「いつも知らないウチにワガママ言われて振り回されるよりまし」
コイツぅ……いつもやられっぱなしだからって調子に乗ってんな?
満足そうな顔をしてる彼女に携帯を返すと、もういいの?と聞いてきた。これ以上笑われるのは勘弁だっつーの!
「あ!そうだ!この前さ〜硝子とお出かけに行ったら美味しそうなパフェ見つけてさ〜ここ食べに行かない?」
嬉しそうに画像を見て欲しいと携帯を操作する画面を見ていると、画像フォルダにハートマークの絵文字のフォルダがある。……怪しい。
「そのハートマークのフォルダって何」
「えっ?!あ〜……えっと、」
「見せて」
そう言って名前の携帯を奪って開こうとすれば、パスワードがかかっていた。
怪しい、怪し過ぎる。現に訳ありだと言わんばかりに目線を逸らす。
「見てもらっていいっつたのはそっちだろ。何、誰?」
「だ、誰って……」
「オトコだろ、誰だよ」
「違っ……う、違わなくはないけど……」
「ああ?!」
「ご、誤解だから!その、怒らない……?」
「内容による、ってもどっちにしてもお前は今日これから俺にイジメられる運命だから、早めに行った方が身の為だぞ」
ベッドの淵に背中を預けている名前の体を逃げられないようにする為淵に両手を置いて壁を作る。頬を赤く染めながら携帯を受け取った彼女は、プッシュボタンを押してパスワードを入力し、俺の方に携帯を向ける。
開いたフォルダに入っていたのは、俺の写真。……え、俺?
一枚一枚押していくと、見覚えのない写真もある。
これは傑と行った任務の帰りにラーメン屋寄った時のだし、こん時のは丁度名前が京都に左遷されて硝子に説教くらってた時のやつ。人気のない所で一人で猫と戯れてた写真も……なんでこんなの持ってんの。
「……硝子とか夏油が一緒に任務行った時とかに送ってきてくれるの。……あと、わたしの……隠し撮り…」
ごめんなさいと両手で顔を隠す名前の耳は真っ赤になっていた。……そういえばコイツ、俺の顔に一目惚れって傑に言ってたな。
サングラスをテーブルに置いて顔を覆っていた名前の手をとり、指を絡ませて握りしめ、真っ赤な顔をして可愛い瞳で見つめる名前と目が合う。
「そんなに見たいなら、ずっと見てていーよ。なぁ、名前ちゃーん?」
あう、と言葉にならない声を出して今にも沸騰しそうな顔が可愛くてしょうがない。ずっとそばで見とけよ、飽きたなんて言わせない程惚れさせてやる。
あぁ、やっぱコイツいじめんのはやめらんねーわ。