運命の赤い糸
 木兎光太郎くんへ

 好きです。
 入学式の時に一目惚れしました。
 朝の練習が終わって朝礼が始まる前に、体育館裏で待ってます。


 可愛らしいピンク色の便箋。わかりやすいハート型のシール。送り主は不明。しかしその見た目だけで誰が見てもラブレターだとわかる手紙は、下駄箱の中に入っていた。中身は想像通りのもので、横から覗くように見ていた木葉がケッ、と悪態をつく。
 女の子らしい可愛らしい字で書かれた文章は、ひどく在り来りなものだった。
「俺! 行ってくるわ!」
「マジ?」
「マジ!」
 普段の言動に似合わず、紙が破れないよう丁寧に封筒の中に戻した木兎の目は、いつもと変わらない輝きを宿している。それだけで木葉は木兎がなんと答えるのか察したが、そもそも木兎がモテること自体が羨ましいのでつつくことはしない。
 じゃ! とラブレターを持ったまま片手を上げて走り去る木兎の後ろ姿を見つめ、木葉は呟く。
「……あれ、行ったらオッケーの意味じゃねぇの?」
 大丈夫か? と一応木兎の心配はしておくが、まぁ悪いことにはならないだろ、と靴を履き替える。入学早々遅刻だけはすんなよ、と言葉にせず呟いて。
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