決して感動の再会ではなく

「初めまして、赤葦京治です」
「あ、……はじめまして……」
 新しい担当だとやってきた男はにこりとも笑う事なく自己紹介を済ませた。軽く頭を下げると「よろしくお願いしますね」と手を差し出される。骨と皮だけで出来たような大きな手だった。同じように「よろしくお願いします」と握り返す。
 セットされずに無造作に伸びた髪は左右に跳ねている。黒縁の眼鏡は落ち着いた雰囲気とも相俟って知的に見えた。自分よりも遥に高い位置にある頭は、なぜか威圧感を与えない。――それは、私が彼の事を知っているからなのかもしれない。
「赤葦、さん、は、以前どの部署に?」
 きっと彼は私の事なんて覚えていないだろうから――実際初めましてと言われたので――初対面を装って会話を切り出してみるが、若干の気まずさから言葉が詰まってしまった。
「週刊少年誌です」
「わ、ぁ……、忙しそうなところだ」
「……まぁ、ほどほどに」
 す、と目を逸らす彼はどこか遠い目をしているようで、どうやらほどほどどころではない程多忙を極めていた事がわかる。彼の事だから髪もわざと伸ばしている訳ではなくて切りに行く時間がなかっただけかもしれない。しかしそれも似合っているのだから、元の顔がいい男というのは得をしていると思う。
「元々文芸希望だったので、ようやくです」
「それは良かった」
「改めてよろしくお願いします」
「はい。こちらこそ、よろしくお願します」
 今度は笑顔を作った彼に倣うようにして笑う。
 忘れられていた事にほんの少しだけショックはあるものの、そこまで仲良くしていた訳ではないし、彼は彼で青春を謳歌していたから仕方がないのかもしれない。私だってこうやって再会するまで記憶の彼方に追いやっていたのだから、お互い様というやつだ。
 ――こうして、私はかつての同級生である赤葦くんとまさかの仕事関係で再会を果たした。