【悟り】幻殃斉と兄弟子


まるで猿のような『形』。

初めて人に優しくされたという『理』。


そしてただ綺麗なものが見たかった、それだけの『真』。




「…哀れなもんだ。」


跡形もなく綺麗に消え去ったそれを見届け、ぽつりと一言。

無意識にこぼれ落ちた言の葉は自分でも意外なもので、思わず苦笑してしまう。


「モノノ怪に同情とは、兄弟子殿らしくもない。」


同じことを感じたらしい幻殃斉はしかし、俺とは反対に眉を顰めて訝しげな顔つきで、それに「そうだな」と軽く同意してやれば、その表情はますます歪んだ。


「黒兎?本当にどうしたというのだ…?」

「あぁ?失礼な野郎だ…俺だって感傷に浸ることもあらぁな。」

「…そんなことで、これからやっていけるのか?」

「あぁ?」


てめぇに心配されちゃあ、おしめぇだ。

そう吐き捨てようとしたところで、ふと思い直す。


そして代わりの言葉を口にした。


「お前は綺麗だなぁ、幻。」

「……は?」


そうからかうように笑ってやれば、一拍の間。

一瞬、言葉の意味が理解出来なかったらしい。


「なっ…ばっ…ふ、ふふん!ようやくみっ、みどもの美的感覚を認めるとは!些か遅すぎ」

「へいへい。それじゃあ俺ァ先に行くぜ。」





『ただ綺麗なものが見たかった』。

だが本当に綺麗なものとは何かを知らなかったモノノ怪が、俺には哀れでならなかった。








【悟り】乙


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嘘つき、ロンリー。