姫姉様と神様01
「あぁ、谷の子だね。」
初めて見る、男の人だった。
ユパ様のような旅人の恰好をしていて、でもユパ様とは違って荷物を何も持っていなかった。
「あなたは誰?」
「僕はケント。君は確か…ナウシカだったかな?」
「!どうして…」
「ふふっ、驚いた?」
突然、言い当てられた自分の名前に驚いた。
でもその人がまるで、悪戯が成功した子どものように無邪気に笑うものだから、私もつられて笑ってしまった。
「そうそう。ナウシカはジルの子だったね。」
「父さまを知ってるの?」
「知ってるよ。ジルだけじゃあない…谷のことは全て、ね。」
僕の知らないことはないよ。
そう自慢気に胸を張るケントに多分、幼い私は目を輝かせていたに違いない。
そして思ったままを口にした。
「神様みたい!」
ケントは、笑った。
「…あぁ、みんなが君を探してるようだ。早くお戻り。」
「え、…」
まだ話がしたいのに…と思っていると、本当に遠くから私を呼ぶ父さま達の声が微かに聞こえてきた。
「本当だ!私、行かなきゃ…」
だけどケントの傍は何故だか心地良くて離れるのが名残惜しかった。
なかなか動こうとしない私にケントは優しく微笑みかけてくれた。
「大丈夫。またいつか会えるよ。」
「本当?」
「あぁ、本当さ。だから」
いつまでも君のままでいておくれ。
「?どういう意味?」
「次に会う時、教えてあげる。」
そう言うと、ケントは私の額にそっと口づけを落とした。
「ナウシカに、風の神のご加護があるように。」
これはまだ、私が幼い頃の話。
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そのおまじないに、私はきっと今でも護られている。
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嘘つき、ロンリー。