河の神と付喪神02
※変態注意?
「その後、どうでございましょう?」
件の湯屋は気に入られましたかな?
そう古い友人に尋ねられ、苦笑いで返したのがつい数刻前のこと。
そして今、己の眼前でひらひらと揺れ動くは『油屋』と書かれた暖簾。
いや確かに、友人が勧めるのも頷ける良き湯ではあった。
恐らくこれまで浸かってきた中でも三の指に入るだろう。
だが「気に入った」と、そう素直に言えぬ理由も少なからずあり…
「ケント様、如何されましたか?」
嗚呼、既視感。
なんて思わず遠くを見てしまいそうになるのを遮るかのように、もう一度名前を呼ばれた。
「ケント様?」
「…あぁ、ハク殿。本日はお日柄も好く。」
「中へ入られないのですか?」
「……………」
自分なりの渾身のぼけをあっさりと流され、中に入るどころか帰りたくなってしまった。
いや、そもそもその姿を一目見た時点で早々に「帰ろうかな…」とは思っていたが。
『あんた、あいつに気に入られちまったみてぇだな。』
ふと脳裏を過るのは、最近馴染みになった下働きの娘が笑う顔。
何でもこの少年、ハク殿はとてもお忙しい方らしい。
通りで三度通えば一度しか会わない訳だと一人納得していれば、その一度がおかしいのだと娘は言った。
それもわざわざこうして出迎えるなど、やはりとんでもないことのようで。
『だがなぁ…気に入られるどころか嫌がらせを受けているような気がするんだが。』
『はぁ?あれだけ「しかん」されといて気付いてねぇの?』
『しかん?』
弛緩?仕官?と思い付く言葉を一通り当て嵌めてみたが、どれもしっくりと意味を成さない。
頻りに首を傾げていると娘から「ハクに聞けよ」と言われたが、「それだけは止めろ」と付喪神としての第六感が囁いたので、とりあえずそれだけは止めておこうと思った。
「支度はすでに整っております。どうぞ中へ。」
「はぁ…それはどうも。」
そして結局は今日も導かれるがまま、流されるがまま。
それもこれも全ては風呂のためと思いつつ、だが湯に浸かるというより疲れに来ているような気もして、思わず溜め息を吐き出すのだった。
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(これが「ぷらまいぜろ」というやつですか?)
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嘘つき、ロンリー。