河の神と少女の兄01
先を行く『ハク様』の、自分と大して変わらない背丈を見つめながら、ケントは不思議で仕方がなかった。
歩調が特別速い訳ではない。
行く先々はどこも『得体の知れぬ人々』で溢れている。
だというのに『ハク様』はするすると前へ進み、後に続く自分はいつまで経ってもその背中を目にするのみ。
必死に足を動かしても、何度か呼び止めてみても、追いつけない。
それはまるで逃げ水のように、ケントの手から逃げていく。
「……すまない。」
そして人波が途絶えてようやく、『ハク様』は足を止めてケントの方を振り向いた。
『ハク様』が、『ハク』へと変わる。
「疲れただろう。少しゆっくり歩こうか。」
「ううん、大丈夫。」
そう答えるケントの息は少し荒い。
勿論そのことにハクは気付いていたが、何も言わずただ手を差し伸べた。
ケントは一瞬迷い、だがその手を取る。
そして再び歩み出しながら、ハクは次の仕事の説明をし始めた。
「今は辛いだろうが、もうしばらくの辛抱だよ。きっと二人とも、ここから逃がしてあげるから。」
最後に添えられたのは労りの言葉と、柔らかな微笑み。
ケントはキュッと胸が痛くなり、思わず繋いだ手に力を籠めてしまう。
「ケント?」
「…ありがと、ハク。」
ずっと『ハク様』の側にいる自分はそれほどではないが、別の場所で働いている妹の方はそれなりに大変な目に遭っているとケントは聞いた。
だけど、
(…千尋には悪いけど……)
ケントはもう少しこのままでいたいなと、そう思ってしまった。
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(こっちのみーずはあーまいぞ)
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嘘つき、ロンリー。