猫男爵と黒猫01


猫の事務所、特製スペシャルブレンド。

客人に振る舞われる度に味の異なるという、それ。


「…なぁ、バロン。」

「ん?」


何やら喧嘩している一羽の烏と一匹の太った猫を横目に、とくとくと紅茶を注ぐ馴染みの紳士を呼んでみた。


「俺ぁ一体、いつになったら美味い紅茶にありつけるんだろうなぁ?」


かなりの頻度お呼ばれしているが、これと言って当たりに当たったことがない。

そうぼやいてみたものの、バロンはうっすらと笑うだけでこちらを見向きもしなかった。


「君がツイていないだけだろう。」

「へぇ?そりゃあ黒猫の俺に対する皮肉かい?」

「これは失礼した。」


まともに取り合う気のないバロンに肩を竦め、俺は自分のティーカップに手を伸ばした。

まぁ、毎度変わるその味は飽き性の俺にぴったりなのかもしれないが。


「そうだな…ここで美味しい紅茶が飲みたいのなら、方法は一つ。」


カップに口付けようとした瞬間、ピンと立てられた指に俺の髭がピクッと反応する。


「…何だよ?」

「それは毎日ここに来ることだ。」

「は?」


毎日?

そう反芻して、思わず苦笑した。


「何かプロポーズみたいだな、それ。」


そんな台詞、いつか人間が言っているのを聞いた気がする。

すると「ふむ」とわざとらしく考える素振りを見せるバロン。


その様子を眺めながら、改めてカップに口を付けようとすると、奴はとんでもない爆弾を落とした。


「そう捉えてもらっても構わない。」

「っ、は…?」

「私としてはぜひ、君の煎れたものを飲みたいところだが。」


理解が、遅れる。

そしてはくはくと口を開閉させるだけで何も言えない俺に、バロンはにんまりと笑いながら自らのティーカップを差し出した。




お茶でもいかが?

「っ、帰るぞ、トト!」


未だ喧嘩をしている相棒を呼び寄せ、返事も待たずに俺は猫の事務所を飛び出した。

この時ばかりは自分の黒い毛並みに感謝だ。


「どうしたんだ?ケントの奴…」

「ふふ…さて、どうしたんだろうな…」


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34000hitより。
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嘘つき、ロンリー。