猫男爵と黒猫02
逃げるように猫の事務所を飛び出して数日。
もうしばらくは近寄らないようにしようと思っていた矢先、仲間内で起きた仲間内では解決出来ないような問題にそうもいかなくなった。
なんてタイミングの悪い。
「さすが、黒猫だねぇ。」
「うるせぇ。」
頭上でトトが笑う。
そして目の前には、数日振りの猫の事務所。
「やぁ、ケント。いらっしゃい。」
気まずさからゆっくりとその扉を開ければ、特に変わった様子もなくバロンに出迎えられ、思わず拍子抜けしてしまった。
俺の名前だけ呼ばれたのは多分、俺が尻込みしている間にもトトはここへ出入りしていたからだろう。
少しぎこちなくそれに挨拶を返しながら俺は事務所内に視線を走らせた。
あの大きな白猫の姿はない。
「ムタは?来てねぇのか?」
「少し用事を頼んである。恐らく君が持ってきた話と関係のあることだ。」
「…トトから聞いたのか?」
「あぁ。簡単に、だが。」
「…………」
だったら、俺がここに来る必要はなかったんじゃないか?
そう恨みがましくトトを見上げれば、わざとらしく口笛を吹きながらそっぽを向かれた。
どうやら相棒に嵌められたらしい。
「まぁ、お茶でも飲みながらムタが戻るのを待とう。話はそれからだ。」
それをフォローするかのようにバロンから席を勧められ、俺は溜め息一つ吐き出してトトを睨むのを止めた。
そして席に着くとほぼ同時に出されたのは、いつものティーカップ。
だが、そこに浮かぶのはいつもの飴色ではなく、真っ黒な
「…コーヒー?」
嗅ぎ馴れない匂いに思わず鼻先がヒクリと動いた。
英国かぶれのバロンにしては珍しいチョイスだ。
そう不思議に思いながら首を傾げていると、俺の様子に気付いたバロンが苦笑する。
「今、君好みのブレンドを考案中でね。完成するまで待ってくれると有り難い。」
「は」
ポカンと開きそうになった口に気付いて、慌てて閉ざす。
危うく前回の二の舞になるところだった。
ここは冷静に、冷静に、と自分自身にそう言い聞かせ、取り繕うように俺はそっとカップに口付けた。
砂糖とミルクはお好みで
「おや、顔が赤いねぇケント。」
「!?なっ、ばっ、んで分かっ」
「何だ、図星かい?」
「くっ…!」
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131000hitより。
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嘘つき、ロンリー。