猫男爵と黒猫03
コーヒー、ココア、ホットミルクにエトセトラエトセトラ。
とある一件以来、次々と手を変え品を変えて俺をもてなす『猫の事務所』の主、通称バロン。
その呼び名からも分かるように英国紳士然としたバロンだが、今日はいつもと少し様子が違った。
何というか、違和感があった。
「湯飲みにお盆って、お前…」
「ちょうど玉露が手に入ったものでね。」
当の本人は特に気にしていないらしく、澄ました顔して俺達の前にそれらを並べる。
茶請けには煎餅と徹底した和テイストに、「よくやるもんだねぇ」と隣でトトが苦笑。
ムタは鼻を鳴らし、「甘いもんが食いたかった」と文句を言いながらもそれらをばりばりと平らげていった。
時折横目で俺を睨んでくるが、俺のせいではない。
「さて、次は何を用意しようか。」
ふと聞こえた声につられて、そちらに顔を向ける。
顎に手を当て、どこか宙を見上げるバロンはその頭の中で今後の様々なメニューに思い巡らせているのだろう。
気のせいか、その姿はどこか愉しげにも見えた。
俺としても、ここまで来たらどこまで行くのか気になるところだが、
「なぁ、バロン。」
「うん?何かリクエストか?」
「あー、いや…リクエスト、っていうか…」
煎餅を一枚手に取り、割って半分トトの方へと放る。
残りを自分の口に入れ、ぼりぼり、ごくん。
「そろそろ紅茶が飲みたいな、って思ってよ。」
ヒクッ、と一瞬、バロンの髭が揺れた。
「ケント、申し訳ないが君好みのブレンドはまだ」
「知ってる。だからさ、」
隣で笑うトトに気付かないふりをして、もう一枚。
ぼりぼり、ごくん。
「バロンの、特製スペシャルブレンドを頼むわ。」
次いで啜るように飲んだ玉露は確かに美味しいような気がしたが、よく分からない。
ただ、「喜んで」と微笑むバロンから目を逸らしながら、ぱたりと一度だけ尻尾を揺り動かした。
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(おかわりを、お願いします)
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リクエストありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。