巷で噂の魔法使いと精霊02
『―…いいですか、ハウル。』
噴水の、流れ落ちるそれに手を差し入れながら、己が師は言った。
『水に形などありません。ならば、この水をここに留めておくにはどうしたらいいか、分かりますか?』
さほど難しい問いではなかった。
だからその時の自分は、さほど悩むことなく答えたはずだった。
『…よろしい。それでは今から私がすることをよく見ておくのですよ。』
そして、くれぐれも注意するように。
「そう、あれが運命の出逢いだったんだ…」
恍惚と語る師匠を見上げ、続けてマルクルはその向かいに佇む美しい青年を見上げた。
青い髪に蒼い瞳、そして碧い装い。
その肌の色も青白いと表現してしまえば、正に『青』年だろう。
ただし、彼が人間だったら、の話だ。
水の精霊『ケント』。
マルクルも名前だけは知るその存在は、先程から「サーセン、覚えてねぇッス」と頻りに頭を下げていた。
(また変わってる…)
ケントの召喚から約一時間。厳かな登場から一転、やたら砕けた口調になったかと思えば突然ゲラゲラと笑いだし、かと思えば今度は低姿勢。
あまりにコロコロと目まぐるしく変わるので、ケント自身疲れないのだろうかとマルクルは少し心配になった。
「もしかして人違い…いや、精霊違いじゃねッスか?」
「僕がケントを見間違える訳がない!」
「あ、サーセン。」
そんなケントの様子を見ても全くぶれないハウルは、未だ「運命」を説き続けている。
その背後ではカルシファーが、今のケントになら勝てると踏んだのか、「蒸発させてやるゥッ!」と意気込んでいた。
ハウルさん、召喚に失敗したんじゃないかな…
その混沌とした現状を前にし、一人そう密かに思うマルクル。
だが残念ながら、この場を収められる人間はここにはいなかった。
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(失敗?いえいえ、成功ですよ。)
(だってほら、)
(『器』だけは完璧です。)
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嘘つき、ロンリー。