巷で噂の魔法使いと兄弟子03
※後日談。
「……あほか。」
そう吐き捨て、こちらを見上げるのは見覚えのある少年。
その眉間に寄せられた皺は記憶にあるものよりも幾分深く、だけど『今の彼』らしくて、思わず笑ってしまいそうになった。
「ねぇ、ケント。」
「……何だ。」
「精一杯睨んでいるつもりのところ悪いけど、上目遣いなんて可愛いだけだよ?」
そして小さくなってしまった兄弟子を抱き上げれば、その小さな口から不釣り合いな舌打ちが聞こえた。
「下ろせ、こら!」
「口が悪いなぁ…悪い子にはお仕置きが必要かな?」
「おい、マルクルは?マルクルはどこだ?」
「あの子にはちょっとお使いを頼んでてね。大丈夫、もうしばらくは帰って来ないよ。」
「何が大丈夫なんだ、あぁ?」
「だってケント、こんな姿、誰にも見られたくないだろう?」
「…………」
まぁ正直に言えば、誰にも見せたくないのは僕なんだけど。
都合良く大人しくなったケントを抱え直して、カルシファーに後を任せた僕は階段を登り始めた。
「…おい、待て。どこに行くつもりだ?」
「あ、マルクルが帰ってきても、しばらく僕の部屋には近寄らないように伝えておいてくれ。」
「聞いてんのか、ハウル。」
「あァ、ほどほどにしとけよォ。」
「あほか!」
すごくどうでもいいように僕らを見送るカルシファーに、再び暴れだしたケント。
だけどその抵抗も今のケントでは些細なもので、僕にとってはただ可愛いだけ。
「うわぁ…どこもかしこも柔らかいなぁ。んー…いい匂い。」
「はなせ、ヘンタイ!」
そして僕はどうしても弛む頬を抑えることが出来なかった。
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(どうやって薬を飲ませたかって?)
(それは企業秘密ということで)
後で覚えてろよ、と苦々しいケントの捨て台詞。
僕は聞こえないふりをして、今を楽しむことにした。
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嘘つき、ロンリー。