巷で噂の魔法使いと帽子屋の息子01
※ソフィー成代♂
※映画終了後。
「ケント、ケント!あれなんてどうかな?」
そう言ってすぐ隣のケントの腰を引き寄せれば、ケントはメモに落としていた視線を上げて、僕が指す方向を見た。
「あれ…って、あの帽子ですか?確かに素敵ですけど、うちのおばあちゃんには少し若者向けすぎるような気が」
「違うよ、君にさ!」
「…俺に?」
キョトンと瞬きを繰り返して僕を見上げたケントはとても可愛くて、思わずキスしたくなったけど何とかそれをぐっと我慢する。
前に街中でやって、ひどく怒られたことがあるからだ。
「きっと君の、星の光に染まったこの髪にとてもよく似合うよ。」
代わりにその耳元に顔を寄せて囁けば、擽ったそうに肩を竦めるケント。
あぁ、やっぱり頬っぺたぐらいにはキスしてもいいだろうか。
なんて思ってすぐ実行に移そうとした瞬間、僕とケントの間に無粋なメモが現れた。
「帽子ならもう持ってますから。お気持ちだけ頂いておきます。」
そのまま僕にメモを押し付けると、ケントは返事も待たずに歩き出した。
僕もあわててその後に続く。
「次はどこに行くんだい?」
「そうですね…買いたい物も大体揃いましたし、そろそろ帰ろうかと。」
「もう?折角のデートなんだし、もっとゆっくり楽しもうよ。」
「それは…また今度にしましょう。」
「えー…」
「マルクル達が待ってますよ。」
少しくらい遅くなったって、みんな許してくれる。
そういくら言い募っても足を止める様子のないケントに、諦めて何気なく手元のメモに視線を落としたところで、ふとそれに気が付いた。
「あ、待って!まだ買ってないものが」
「その訳の分からない魔法薬の材料購入なら却下です。」
「!?そんな…!これは僕が美しくあるために必要な」
「俺は、」
「俺は、今のハウルさんが好きですよ。」
「…ハウルさん?どうしました?」
急に立ち止まった僕に気付いたのか、不思議そうに振り返ったケント。すぐに「何でもないよ」と返して、僕はその隣に並ぶ。
ついつい弛んでしまう頬は、どうしても抑えることが出来なかった。
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(嗚呼、君には敵わない)
(でもそれが、幸せ)
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嘘つき、ロンリー。