生徒会長と同級生02


「何だ、水沼殿も意外と意気地がないな。」


意気揚々と足を一歩踏み入れた瞬間、呆れたような声に出迎えられ、水沼は思わず眉を顰めた。

高揚していた気分に水を差された上に「意気地がない」とは心外だ。


すると風間が「結局渡せなかったんだろう?」と続けて何やら指差すので、つられて行方を目で追えば行き着いたのは自身の右手。


握っているのは、タオルが一枚。


「!?」

「…まさか渡した後、そのまま持ち帰って来たのか?」



その、まさか、だった。



部活動中のケントに差し入れする。

そう提案した親友に従ったのはつい十数分前のこと。


物は無難にタオルを、そして不自然にならず渡しやすいように事務連絡のついでを装って、など綿密な計画を立てた上での実行。


全て上手くいった、はずだったのだが。


(しまった……ケントから洗って返してもらうことで、もう一度接触するチャンスを作るはずが…そのためのタオルでもあったというのに…!)


緊張のせいか、どうやら最後の最後で失敗してしまったらしい。

押し寄せる悔恨にタオルを掴んだ手に思わず力が篭る。


ぎゅっと握り締めた瞬間、ふと湿った感触に気が付いた。


改めてそれを見ると、所々汚れているのはグラウンドの土のせいだろうか。


つい先程、ケントはこのタオルで濡れた両手を拭い、首筋を伝う水を拭い、口元を拭いー…



(…つまり今、このタオルにはケントの汗が、匂いが、唇が)





「……水沼?」


訝しげな親友の声に、はっと我に返る。


「何だ、俊。」

「鼻血が出てるぞ?」

「……………………………」





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(さすがに、手にしたそのタオルでそれを拭く訳にはいかなかった)


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嘘つき、ロンリー。