王子と大賢人の従者01


「買う物は大体揃ったか?」


声を掛けられ、反射的にその手にあったものを後ろ手に隠した。

そしてケントの問いに小さく頷く。


ケントは特に気付いた様子もなく、「じゃあ、そろそろハイタカと合流するか」と人の姿が増えた通りへと目を向け、溜め息を吐いた。


「合流……出来るといいが…」

「…………」

「流石の大賢人も、この人混みじゃあ俺達を見付けるのは難しいかもな。」


そう言って苦笑するケントの手が、自然とその首元へと伸びる。



『ずっとあったものがなくなると、何かこう…違和感、があるだろう?』



それは初めて出会った時からよく目にしてきた、ケントの癖だ。

ハイタカに助けられ、テナーさんの家で世話になるようになって、まるで兄のように色々教えてくれたケントだったが、それ以上話してくれることはなかった。


そこに何があったのか、何がなくなったのかは分からない。

ただ、その度にケントの横顔が陰りを帯びるのを見て、余程大切なものだったのだろうと察した。




『まぁ俺の場合、なくなったのはもう随分と前なんだが、未だに慣れなくてな。』



だから、






「―…でも、本当助かったよ。男手が俺一人じゃ、どうもテナーの要望全てに応えきれなくて」


不自然に途切れた言葉につられ、意識が浮上する。

首に触れた格好のまま、ケントは目を細めてどこかを見やっていた。


「ケント……?」


ハイタカの姿を見付けた、という訳ではなさそうだ。

不思議に思い、ケントの視線を辿れば、ふと見覚えのある荷馬車に目が留まる。


それと同時に、自分も一度だけ体験したその重く冷たい感触を思い出し、一瞬呼吸が止まった。


「………アレン?」


そして次に聞こえてきたケントの声に、無意識の内に自分の首に触れていることに気付いたのだった。






の記憶

(露天商で見付けたその首飾りは)
(きっと彼に似合うとそう思って、だから)

(また、黒が滲み始める)


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186000hitより。
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嘘つき、ロンリー。