妖精と姉妹の従兄01


『次はー…』


車内アナウンスを聞いて、降車ボタンを押した。

親戚の家に向かう途中のバスの中、乗客は俺一人だけ。


そして停車したのと同時に腰を上げ、何となく視線を暗い窓の外へと向けた。


(あちゃー…)


ヤバそうだ、とは何度も思っていたが、とうとう降り出してきたようだ。

窓を打つ雨にどうしようもなく、とりあえず頭を掻いてみる。


天気予報は知っていた。

でもギリギリ間に合うだろうなんて楽観してしまい、生憎折りたたみ傘すら持っちゃいない。


(やっぱ迎え、断るんじゃなかったかな…)


今更後悔しても遅いだろうけど。

なんて苦笑しながら、ステップを完全に降りきった瞬間。



「……へ?」



視界一杯に灰色の巨大な毛玉。

一体何だ?なんて考える間もなく、背後からは扉が閉まる音がした。


『発車オーライー。』


「……はっ、ちょっ」


慌てて振り向いたがすでに遅く、バスは遠ざかって行って奇妙な沈黙が訪れる。


「……」

「……」


気まずい。非常に気まずい。

だが立ち去るタイミングは完全に逃しており、俺は上手く次の一歩を踏み出せずにいる。

ジッと円らな瞳で見つめられ、思わず視線を逸らした。


(何だ?この生き物…いやいや、こんな生き物がいてたまるかよ。ぬいぐるみか?ぬいぐるみだよな?百歩譲って着ぐるみだよな…!)


テンパリ過ぎたのか、よく分からない思考回路に陥る。


どうでもいいけど、時折動く耳の仕組みが気になる。

表情豊かな顔の仕組みが非常に気になる。


「……」

「……」


そして俺の髪がしっとりと濡れてきた頃、ようやく相手の方に動きがあった。


「あ、ども…」


不意に差し出された傘を受け取れば、相手は満足げに数回頷いて俺に背を向ける。


その後ろ姿を最後まで見送って、俺はぽつりと呟いた。


「……村おこしの、マスコットキャラか?」






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(あ、お父さんの傘!)
(トトロだ!おにいちゃん、トトロに会ったの?)
(なんだ、知り合いか?)
(へへっ、ケントおにいちゃんも結構子どもなんだね!)
(へ?)

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嘘つき、ロンリー。