紅豚と技師01


「―…おい、アンタ。また勝手に機体を弄っただろ。」

「ただの応急措置だろうが。それとも何か?エンジンがイカれるまで飛び続けろとでも言うのか?」

「そうは言ってねぇだろ。むしろそこまで酷使するつもりなら、二度と飛行艇乗りなんて名乗れねぇようにしてやる。」

「はっ、出来るもんならやってみやがれ。」

「ちっ…そうじゃなくって、俺は『もっとまめに見せに来い』って言ってんだ。定期的に、なんて贅沢は言わねぇ。違和感を覚えた時点、それか百歩譲って処置した後すぐに、だ。不精して放置するな。」

「まったく、神経質な野郎だぜ。」

「っ、俺達技師はな!アンタら飛行艇乗りの命を預かってんだよっ!」


作業場に入ると同時に聞こえてきた言い争いに、ピッコロは「またか…」と溜め息一つ吐き出して頭を掻いた。


よくもまぁ、飽きないことだ。

あの愚息も、豚も。


「まぁたやってんのかい?」


歩みを再び始めれば、物陰に隠れて見えなかった二人の姿が見えてくる。

ニヤニヤと笑うマルコに、その胸ぐらを掴むケント。

上二人の息子らも血の気は多い方だが、特にこの末っ子はそれ以上に喧嘩っ早い。

はて、一体誰に似たのやら。


「ケント。」


侃々諤々の議論は大いに結構。

だが客を相手に手が出るのは見過ごせない。


そこで父親らしく鋭くその名を呼べば、舌打ちと共にケントは渋々その手を離した。


「…兄貴達と、もう少し話を詰めてくるよ…」


設計図を手に作業場を出て行くケントを見送り、入れ替わるようにしてピッコロはマルコの隣に立つ。

そして我が子の乱暴な振る舞いに謝罪すれば、「なぁに、気にしちゃあいねぇよ」とマルコは相変わらず笑っている。


「まったく…腕はいいんだが、カッとなりやすいのが玉に瑕でな。」


特にアンタが相手だと。

そう皮肉混じりに付け足せば、満更でもない様子に少し腹が立つ。


ピッコロも、分かってはいるのだ。

目の前の男がわざとあの愚息を焚き付けていることは。


だが、それを注意したところで豚が人の言うことを聞く訳がない。


ピッコロはもう一度溜め息を吐いた。




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(しかしケントはああ言っていたが、アンタ、この頃うちによく顔出すようになったじゃないか。)
(……………)
(よほどうちの末っ子を気に入ってくれたようだが、手ぇ出すなよ?)
(……………)


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嘘つき、ロンリー。