紅豚と技師02


ピッコロ社との付き合いは長く、その腕が良いのも充分承知している。


が、修理費は相変わらずぼったくりのような金額で、事務室を出たポルコは少々軽くなった己の身に舌打ちした。

そして、そのままの足で作業場へと向かう。


一仕事終え、未だ熱気が残っているものの人気は少なく、片付けを行う数人の姿があるのみだった。


「よう、世話になったな。」

「ん…あぁ、ポルコか。もう発つのか?」


その内の一人に目を付けて声を掛ければ、タオルで額の汗を拭いながら顔を上げた相手はピッコロの長男坊だ。

そこで軽く一言二言言葉を交わしていると、不意に物陰から段ボールを抱えた次男坊がひょっこりと顔を出し、


「ケントなら自室でくたばってるぞ。」


尋ねてもいない三男坊の所在を教えられ、ポルコは思わず眉を顰めた。

それを聞いて、一体自分にどうしろというのか。


と、問い返すより先に口を開いたのは長男坊だった。


「ちょうど良かった。そろそろ起こそうと思ってたところだよ。じゃあ、よろしく。」


当然、のように押し付けられた「仕事」をポルコが断る間もなく、用は済んだとばかりに散っていく兄弟達。

長い付き合いのせいか、見送る気もなければ「気を付けて」の一言もないらしい。


「……………」


そしてしばらく考え込んだ後、ポルコは二度目の舌打ちをしたのだった。






(………確かに、くたばってやがるな。)


元は単なる仮眠のつもりだったのか、ベッドではなくソファーの方に横たわっているケント。

その片腕、片足はすっかりずれ落ちてしまっていて、ほんの少しでも身動ぎすれば、ポルコは何もすることなく当初の目的を果たせるだろう。


(あの兄貴は「起こせ」と言っていたが…)


閉じた目蓋の下の隈が、それを躊躇わせた。


それに、普通幼く見せるはずの寝顔がむしろケントを大人びて見せているのも、理由の一つかもしれない。

会う度に噛み付いてくる威勢は鳴りを潜め、開けば小憎たらしいことしか言わないその口も今は閉ざされたまま。


見慣れない姿に何となく調子を狂わされるのを感じながら、ポルコはそっとその横顔に手を伸ばしたのだった。




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(……何で起こしてくれなかったんだよ、兄貴。)
(え?いや、俺はポルコに頼んで…って、ケント。お前、その顔どうした?)
(は?顔…?)
(プッ…おま、鏡見てみろよ。えらく可愛くなってるぞ。)
(!あんの豚野郎っ…落書きしやがったな…っ!)


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嘘つき、ロンリー。